篠山市東部、 福住地区の西京街道沿い約3・2キロにわたる 「篠山市福住 (ふくすみ) 伝統的建造物群保存地区」 (以下 「伝建地区」) が10月19日、 国の文化審議会で国の 「重要伝統的建造物群保存地区」 (以下 「重伝建地区」) に選定するよう文科相に答申された。 同市の重伝建地区選定は、 2004年の城下町を中心にした 「篠山伝建地区」 に次いで2カ所目。 全国では99地区目、 県内では、 ほかに神戸市北野、 豊岡市出石が選定されている。 複数の重伝建地区を持つ市町村は全国で14、 関西では京都市に次いで2カ所目。 建物や工作物の修理への助成制度が導入され、 来年度以降、 まちなみを保存する動きが活発化し、 城下町のような観光振興が期待される。
【宿場町と農村】
対象地区は、 福住地区の福住、 川原 (かわら)、 安口 (はだかす)、 西野々の各一部の約25・2ヘクタール。 重伝建地区選定の3基準の一つ、 「伝統的建造物群及びその周囲の環境が地域的特色を顕著に示している」 として選定された。
福住は、 江戸時代に宿場町として栄え、 川原、 安口、 西野々は宿場の機能を補完する農村集落だった。 福住では二階建ての瓦葺き、 他は平屋の茅葺き (現在は鉄板葺き) が多く、 3キロにもわたる1つの街道に宿場町と農村集落の2つの歴史的景観が共存しているまちなみが全国的に貴重であると位置づけられた。
【住民と市協働】
まちなみ保存の動きは、 2004年にさかのぼる。 市営本陣団地の整備をきっかけに県の事業として3年間、 住民がまちの魅力を探すなどのまちづくり勉強会を始めた。 翌年には文化庁の調査官が視察を始めた。 07年、 専門家、 県、 市、 文化庁、 住民らでつくる 「保存対策調査委員会」 を設置し、 2年間、 建造物や景観などを調査したり、 住民への説明を重ねた。 09年、 地元住民を中心に 「まちなみ選定準備委員会」 (粟野章治委員長) を結成。 地元と市教委が、 「特定物件」 の所有者に保存の同意を得る活動を行った。 今年6月、 まちづくりを進める住民団体 「福住まちなみ保存会」 (山取武会長) を結成。 7月に市の伝建地区に指定され、 8月に文科相へ国重伝建地区選定を申し出ていた。
【修理8割助成】
地区内の古い建物を保存したり、 まちなみを統一させるために、 修理費が優遇される。 「特定物件」 に指定された、 建物、 神社など建築物 (150件)、 門、 塀、 石垣などの工作物 (52件)、 庭、 樹木などの 「環境物件」 (21件) の修理に8割、 特定物件以外の建造物を改築、 新築する場合の外観の修景や、 工作物の修理に6割が助成される。 すでに市教委は、 来年度の修理希望アンケートを住民に実施。 11月から修理の緊急度などを調査する。
【古民家改修進む】
地区内では、 すでに古民家や空き施設などを改修した店舗や施設が建ち、 活性化の一翼を担っている。 築400年の古民家を改修した、 福住まちづくり協議会の拠点施設 「さんば家ひぐち」 のほか、 イタリアン家庭料理店、 素泊まりの宿、 ガラス工房、 古家具修理工房、 郷土料理調理施設などが建ち並ぶ。
【保存から賑わい】
重伝建地区先輩の 「篠山伝建地区」 が選定されて8年。 修理された特定物件は53カ所81棟。 特に河原町の妻入り商家群では、 カフェやギャラリーとしても使われ、 アートフェスティバルや 「ササヤマルシェ」、 ひなまつりなどの新イベントなどで観光客が増加している。
「篠山まちなみ保存会」 の小林一三会長は 「当初は昔の姿を維持しようという狙いだったが、 今は観光客が増え、 どのようににぎわいを呼ぼうか、 住民が積極的に考えるようになった」 と話す。