任期満了に伴う丹波市長、 市議会議員選挙が11月18日、 投開票された。 市長選は現職の辻重五郎氏 (73) =無所属、 自民、 民主推薦、 氷上町中=が、 政治団体役員の稲上芳郎氏 (39) =無所属、 市島町酒梨=と行政書士で書家の足立又男氏 (64) =無所属、 柏原町柏原=の2新人を破り、 三選を果たした。 当日有権者数は、 5万5384人。 投票率は、 市長選で70・35% (前回無投票、 前々回78・59%)。 市議選は、 定数20に23人が出馬し、 現職2人と新人1人が落選した。 投票率は、 70・35%と、 前回の75・84%を下回った。 市長、 市議の次期任期は12月5日から。
市長選では、 旧町ごとに設けた後援会組織と自民、 民主の推薦、 連合兵庫の支持など、 基礎票で上回る辻氏が、 告示日1週間を切ってから相次いで出馬を表明した稲上氏、 足立氏の猛追をかわした。 辻氏の得票は、 1万7752票で2位の稲上氏とは約4700票差。 落選2候補の得票が、 辻氏の得票を上回った。
辻氏は、 後援会支部長を元丹波市の助役2人や一部自治振興会長で固めるなど、 「地域の顔役」 による後援会を組織。 市長候補者で唯一、 旧町ごと市内6カ所で個人演説会を開き、 さまざまな事業を展開しながらも、 市債の繰り上げ償還など、 財政健全化を進めてきた2期8年の実績を訴えた。 丹波市合併時の市長選は、 届出締め切り1時間前に立候補した小倉文雄氏 (63) =柏原町柏原=との一騎打ちで、 前回が無投票。 「初めての本格的な選挙戦」 (陣営) を、 支持基盤の切り崩しに合いながら逃げ切った。
稲上氏は、 橋下徹大阪市長が塾長を務める 「維新政治塾」 の塾生として 「維新」 の看板と、 若さをアピールし 「まちを変えよう」 と訴えた。 市長選出馬予定だった小倉氏が立候補を見送り、 稲上氏に一本化をはかった経緯から、 小倉氏の地元の柏原地域でミニ集会を開いて支持を広げたり、ショッピングセンター前での辻立ちなどで、 支持拡大をはかったが、 市全域に浸透するには至らなかった。
足立氏は、 長年胸に温めていた 「故郷を良くしたい」 との思いをぶつけた。 元衆議院議員私設秘書、 建設会社勤務時代に培った人脈や、 書家としての顔を持つ足立氏の芸術仲間からの支持を得て、 自宅がある柏原、 出身地の青垣で精力的に活動したが、 広がらなかった。
【解説】 “不信任”から立て直し
丹波市長選挙の争点をあげるなら、 「辻市政8年への評価」 だった。 三つ巴の戦いとなったが、 市民は辻市政を続けるのか、 変えるのかの2択を迫られた。 その結果、 当選はしたものの、 稲上、 足立両氏の合計得票数が辻氏の得票を上回り、 辻市政は 「NO」 を突きつけられた。 辻市政の3期目は、 不信任からスタートし、 立て直しをはかる。
当選から一夜明けたインタビューで 「市民の声を聞く努力に欠けていた」 と反省の言葉を口にし、 他候補の訴えに 「未来への希望や展望を感じ、 自分より優れていた」 とも自戒している。 若い稲上氏のはつらつとした訴えと、 足立氏の地道に支持を広げる運動を脅威に感じた跡がうかがえる。
市長候補や、 多くの市会議員候補が訴えたのは、 少子高齢化に伴う人口減少が引き起こす閉塞感であり、 それを打開するための雇用の創出をはじめとする若者対策だ。 有権者も期待している。 辻市長自身も 「若者が住みやすい、 誇りのもてるまちづくり」 を訴えており、 それを軸とする施策が展開されるはずだ。 ただ、 市長候補3氏がそれぞれに訴えても、 市民が納得する特効薬がないことも、 一方ではっきりした。
若者のニーズは感覚的なものだ。 73歳の現職が強みとして訴えた実績と経験が通用しない、 ジェネレーションギャップを埋める工夫が必要だ。 若手職員の育成、 市内に住む若者の本音に耳を傾けることだ。
選挙戦は、 市長に原点ともいうべき 「市民の声を聞く努力」 を思い出させた。 これからの4年は、 その次の4年につながるものとなるだろう。 市政は、 大きな転換期を迎えた。