兵庫県は4月25日、 福井県内にある4原子力発電所で、 東京電力・福島第1原発と同レベルの事故が起きた場合の県内への放射性物質の拡散予測を発表した。 篠山市では高浜原発での事故が最も影響が大きく、 1歳児の 「甲状腺被ばく線量」 が1週間で167ミリシーベルトに達し、 国際基準の3倍以上になると予測。 丹波市では大飯原発の影響が最も大きく、 同106ミリシーベルトとなり、 こちらも基準の2倍以上となることが判明した。 一方、 成人を想定した 「実効線量」 は、 同基準を下回る結果になった。
県は▽高浜 (関西電力) ▽大飯 (同) ▽美浜 (同) ▽敦賀 (日本原電) ―の各原発が事故を起こし、 福島原発と同レベルのセシウムとヨウ素が6時間放出されたと想定。 過去3年間の気象データに基づき、 大気中の放射性物質濃度が最大となる日時を推計した上で、 篠山市、 丹波市、 神戸市、 豊岡市 (各市役所所在地点の周辺4キロ四方) での7日間の被ばく線量を予測した。
推計した被ばく線量は、 「甲状腺等価線量」 と 「実効線量」 の2種類。
甲状腺のみに対する指標である 「甲状腺等価線量」 では、 大人よりも甲状腺への影響を受けやすい1歳児について、 1週間の積算被ばく量を推計。 IAEA (国際原子力機関) は、 甲状腺がんの発生を抑制する 「安定ヨウ素剤」 を服用する基準を1週間で50ミリシーベルトとしている。
篠山市では、 高浜でIAEA基準の3倍超、 大飯でも基準を上回った。 丹波市では、 大飯で2倍超、 高浜でも基準を上回った。 美浜、 敦賀では基準を下回った=表参照。
一方、 大気中と地表に付着した放射性物質からの全身に対する内部、 外部被ばくの指標となる 「実効線量」 は、 成人の場合で推計。 IAEAは、 屋内退避や除染を行う基準を1週間で100ミリシーベルトとしている。
同線量では、 両市ともいずれの発電所のケースでも、 IAEA基準を超える結果にならなかった。
兵庫県に最も近い高浜原発から県境までは約40キロ。 「原発事故時に緊急防護措置が必要となる区域 『UPZ』 を原発からおおむね30キロを目安」 としている国の原子力災害対策指針では圏外に位置する。
しかし、 県では、 福島原発事故時に30キロ圏外でも防護措置が必要になったケースがあったため、 独自に拡散シミュレーションを行った。
県では今後、 国の原子力規制庁に設置される 「地域防災協議会」 にシミュレーション結果の反映を求めるほか、 県の地域防災計画を見直し、 線量が高くなると予測された地域に安定ヨウ素剤の配備を検討していく。