兵庫県篠山市藤坂の春日神社で5月12日、 豊作を祈願する神事 「御田植祭 (おたうえまつり)」 が行われた。 禰宜 (ねぎ) と呼ばれる氏子の当番が数人、 田起こし、 代かき、 田植えまでの一連の所作を披露し、 集まった氏子ら約50人とともに 「今年も豊作でありますように」 と願った。
本殿で祝詞奏上や玉串奉てんなどの儀式を行った後、 本殿下の舞堂に移動。 宜数人が舞堂に上がり、 その内の一人が 「奥の田んぼ 口の田んぼ 尺の穂垂れに 寸の米 ところ繁盛 殿よかれ」 と囃子を繰り返し唱えた。
囃子の調子に合わせるようにして、 田んぼに見立てた舞堂内を、 木彫りの牛の面を付けた宜が前かがみになってゆっくりと歩いた。 その後を木製の鋤 (すき) や鍬 (くわ) を持った農民役の宜が続き、 しばらく周回。 牛で田を耕し、 代をかく所作を繰り返して田ごしらえを終えると、 田植え役の3人が登場し、 苗に見立てたカツラの木の枝の束を床に1列に4束ずつ6列に丁寧に置いた。 計24束を本殿に向かって整然と並べ、 神前に奉納した。
宜長を務めた岡本嘉一さん (66) は、 「神事を行っていて、 いつも感じるのは、 昔の人の豊作を願う切実な思い。 しかし、 その思いは現代でも同じ。 天候によって出来高を大きく左右される農業をやっていると、 自然に対する畏敬の念を感じずにはいられません」 と話していた。
同神事は、 毎年5月10日前後の日曜日に行っているが、 いつから始まったかは不明という。 同集落では、 60―69歳までの10年間、 宜を務めるのが習わしで、 現在14人で同神社の行事を引き継いでいる。