有限会社あおぞら開発の土谷正敬さん (77) =丹波市柏原町南多田=が、 マツの樹脂を用いて田んぼの雑草を抑える実験に成功し、 このほど特許出願した。 水で薄めたマツの天然樹脂を、 田植えが終わった後の水田に流し込むことで、 水面にはった油膜が雑草の若芽を抑えるというもの。 今年、 田んぼの一角、 約30坪で実験したところ、 ほとんど雑草が生えなかった。 「農薬を使わずに農地、 環境を守り、 丹波の発展につながれば」 と期待している。
自然の中に、 自然に生える雑草を抑えるヒントがあるはずだと思いついたのが、 松ヤニ。 天然のものなので、 米への害もないはず―と発想した。
一昨年、 自身でマツの油を精製するところから始めた。 手間とコストがかかるため、 不純物が入っていない松ヤニを購入。 どのくらい薄めても効果があるかをプランターで実験し始めた。 昨年、 プランターの中では雑草が生えなかったことを踏まえ、 今年は田んぼで、 10分の1ほどに薄めたマツの樹脂を、 1坪あたり1リットルの量を入れて試した。
田植え後、 1週間から10日の間に1度だけ流し込む。 最初は水が白く濁るが、 数日で透明に戻る。 「最初は稲の成育が遅れたが、 1週間ほどで追いついた。 樹脂の量はもっと少なくても大丈夫ではないか」 との感触を得た。 今後は、 樹脂の効率のよい流し込み方やコストダウンの方法についてさらに研究を進め、 収穫後は食味についても検査機関できちんとしたデータをとる予定。
土谷さんはこれまでから、 種籾を挟んだ綿布を田んぼの水面に浮かべて雑草を抑える布マルチ直播栽培を試すなど、 農薬を使わない水稲栽培に取り組んできた。 「信念を持って、 いろんなことをやってきた経験から、 ここに行きついた。 若い人たちに 『食』 を支える農業に興味をもってもらえるよう、 伝えていきたい」 と話している。
今年3月まで丹波農業改良普及センターで勤務し、 同農法の実験の様子を見守ってきた加西農業改良普及センターの猪口覚さんは、 「理論的には合っており、 手間もいらないので非常に興味深い。 1回まいただけで効果があったことは驚き。 あとは一般の人や、 有機栽培をしている人がこの農法を受け入れるかどうかだろう」 と話している。