篠山市不来坂の薬師堂で4月21日、 堂内にまつられている本尊の薬師如来が御開帳された。 前回の開帳がいつだったかを記録したものが残っておらず、 80年間、 同集落で暮らしている男性も 「お薬師さんを見たのは初めて」 と話している。 少なくとも80年以上ぶりの御開帳を記念し、 高仙寺 (同市南矢代) の葉上剛仁住職を迎え、 法要を営んだ。 同集落の観音講 (11人) をはじめ、 集落の住民ら約20人で般若心経をあげたほか、 長さ約8メートルの大数珠で数珠繰りを行うなど、 薬師如来との初対面を喜んだ。
同薬師堂は、 「多紀郡四国八十八ヵ所霊場」 の85番目の札所で、 観音講が管理している。 毎年4月21―25の5日間に行われる 「山開き」 と呼ぶ札所めぐりの期間中は、 祭壇をたくさんの花で飾り、 参拝者には朱印を押すなどの接待をしているほか、 毎月1日にも寄り集まって祭壇に花をたむけるなど、 村人たちの心のよりどころとなっている。
手厚く祭っているにもかかわらず本尊の扉は閉じたままだった。 「滅多に開いてはならないものなのでは」 「本尊の御開帳は何年ごとにすればよいのやら」 「前回の御開帳はいつだったのか」 などと不明な点が多く、 開帳されることなく月日が流れたという。
住民には 「お薬師さんと向き合ってお祭りしたい」 という気持ちが常にあり、 2年前、 「一度開帳しよう」 という話が持ち上がった。 吉良博之自治会長が葉上住職に相談したところ、 「大切にお祭りする気持ちが大事。 毎年、 薬師如来を盛大に祭っている 『山開き』 の日がよいのでは」 と話がまとまり、 今回の開帳となった。
吉良自治会長が、 恐る恐る扉を開けると、 長年のほこりが降り積もった薬師如来座像が姿を現した。 高さは約35センチ (後光や台座を含むと約55センチ)。 左手に持つのが通例になっている薬壺 (やっこ) は見当たらなかった。
観音講代表の森本さかゑさんは 「ようやく姿を拝見しながらみんなでお参りすることができ、 気持ちがすっきりしました。 これからもきちんとお祭りさせてもらいます」 と笑顔だった。