篠山市今田町黒石の農業、 小林武司さん (69) は草刈りをしなくてもよい畦 (あぜ) づくりに挑戦している。 田んぼの畦や法面 (のりめん) などに、 雑草抑制のための 「センチピードグラス」 を吹き付けて緑化させ、 草刈り作業を省力化する手法で、 一昨年から取り組み始めた。 今夏、 早速その効果が出始めており、 小林さんは 「今年は草刈りをしなくても済みそう。 そう思えるだけで、 すごく気持ちが楽です」 とほほ笑んでいる。
センチピードグラスは、 草丈が10―25センチで、 葉の幅が約5ミリと細長い。 生育旺盛で、 地表に 「ほふく茎」 を伸ばし、 地表面を密に覆って芝生化するため、 雑草が生えるのを抑制。 草刈り作業の省力化が期待できる。
「農家にとって、 草刈りは大変な重労働」。こう話す小林さんは、 約1ヘクタールの田んぼを管理し、 畦の草刈りは年間4、 5回行う。 1回に要する日数も少なくとも3日は掛かるという。 草刈り作業の省力化を模索していたところ、 インターネットや農業系雑誌でセンチピードグラスを知り、 一昨年の夏から管理農地の半分で効果を試す実験を始めた。
小林さんによると、 センチピードグラスの種に、 ドロドロに溶かしたダンボールと肥料を混ぜ合わせたものを畦に吹き付ける。 この技術は愛媛県の業者の特許で、 溶けたダンボールが種をその場に留まらせ、 発芽率も向上させるという。
冬場に雑草を焼却するなど、 下ごしらえを済ませた昨年6月、 業者に依頼し、 センチピードグラスの吹き付けを実施。 2カ月後には密生し始めたという。 今年の冬は密生し過ぎた個所を刈り込むなどの手入れをして管理。 迎えた今夏、 田んぼの畦には青々としたセンチピードグラスが生い茂り、 そのほかの雑草はほとんど見当たらない。
専用の噴射機を使い、 吹き付け作業時間は、 100平方メートルあたり2―3分。 経費は1平方メートルあたり250―350円。
小林さんは 「高齢になると草刈りは本当に重労働。 それが離農の一因にもなっている。 センチピードグラスが普及すれば、 地域農業を守ることにもつながるのでは」 と話している。
今後は、 すべての管理農地や庭先でも実施する予定。 問い合わせは、 小林さん (090・3039・1360)。