篠山市大山新の二宮神社で2日、 伝統の 「湯立 (ゆだ) て」 神事が行われた。 氏子6人 (氏子総代・中道秀樹さん) が集まり、 釜で沸かした湯を浴びて、 家内安全、 無病息災、 地域の安泰などを祈願した。 神社行事などの世話役を担う 「当人」 を務めている古川昌さん (68) は、 「神社の氏子はわずか6戸と少なく、 神事の準備などは大変なことも多いが、 先人から代々受け継いできた大切な伝統。 元気で過ごせるのも神様のおかげと感謝しながら守っていきたい」 と話している。
神殿前にわら縄を張り、 そのわら縄に御幣 (ごへい) や榊 (さかき) を飾り付けてこしらえた約3メートル四方の結界の中に、 直径約40センチの釜を3つ据え、 薪を燃やして湯を煮えたぎらせた。 それぞれの釜の湯をひしゃくで数回ずつすくい、 3つの木桶に移したあと、 木桶を神殿の祭壇に供え、 日置春弘宮司が祝詞をあげた。 続いて、 氏子たちが結界内に整列。 日置宮司が、 半紙と水引で束ねた熊笹を釜の湯に浸し、 大きく左右に熊笹の束を振って、 氏子たちに湯の飛沫をかけ、 罪やけがれを祓 (はら) った。
神殿の祭壇には、 お神酒と赤飯のほか、 野菜や果物など7品を供えるならわしにのっとり、 当人によって整然と飾り付けられた。
50年ほど前から同神事に参加しているという松井勝美さん (80) は、 「昭和の始めごろまでは、 結界の中で巫女が神楽を奉納したり、 参道を花笠や灯ろうで美しく飾っていたと聞く」 といい、 「毎年、 健康でこの日を迎えられることが何より。 釜の湯を浴びると、 厄が落ちたような気がします」 と笑顔を見せていた。
日置宮司によると、 日置宮司が務めている神社の中で湯立ての神事を行っているのは、 同神社のほかに幡路の稲荷神社と、 向井の八幡神社だけという。 二宮神社の湯立て神事がいつから始まったかは定かでないというが、 釜には明治37年 (1904) に氏子が寄贈したことが記され、 日置宮司は 「江戸時代から続いているのでは」 と推察している。