丹波市豪雨災害から2週間が経過した。 甚大な被害を受けた同市市島町前山地区ではライフラインを中心に復旧が進んでいるが、 家屋や倉庫、 自動車などをなぎ倒した林地崩壊の跡は生々しく残ったまま。 災害後も2度にわたって避難勧告が出されるなど気候は安定せず、 強い雨が降るたびに被災地では2次災害への不安が増している。
災害発生時に土砂で生き埋めになった男性宅からほど近い、 市島町徳尾の岩垣辰男さん (74) 宅も裏山が崩れ、 家屋は原形をとどめたものの山側の外壁を覆うように土砂が押し寄せた。 災害後も雨が降るたびに、 窓枠から泥水がしみ込んだ。
土砂や割れた窓ガラスの処理を自分のできる範囲でしながら自宅で暮らすが、 2次災害への不安は消えない。 避難命令が出れば、 地元公民館へ避難する。 「埋まってしもたら、 みんなに迷惑かける」。 災害発生から1週間ほどして、 ようやく土砂を取り除く重機を入れてもらった。 「こないだの半分ほどの雨が降ったら、 (裏山は) もうもたんやろな」 と力なく笑う。
市が 「土砂崩れ」 ではなく、 「林地崩壊」 と改めたほど、 土砂で被災した地域では山の中腹から滝のように土砂が流れ、 床上、 床下に堆積した。 市の発表では、 116カ所 (28日現在) に及ぶ。
市は、 2次災害を警戒し、 山際の民家などを調査、 民家に迫っている土砂をかきだす作業を順に進めている。 担当課は 「不用意にかきだすと、 地形によっては逆に崩れやすい状況を作ってしまう。 慎重に進めている」 という。
ライフライン、 道路、 河川、 排水路など、 「通常の暮らしができる状態」 をめざして復旧が進められているが、 土砂への対策は、 規模が大きく、 対策が必要な場所も多いため、 特に危険度が高い所以外は、 手がつけられていないのが現状だ。
県は9月定例会で災害復旧経費を補正予算で計上する予定。 被害個所を把握し、 どの事業メニューに乗せて復旧工事を行うか、 優先順位も含めて調整中。 砂防事業などでは地元や地権者の同意が必要で、 市が地元交渉を担い、 手続きを進めている。
災害復旧にかかる国の査定が10―11月ごろとみられており、 柏原土木事務所は、 「本格復旧工事の着手は査定以降となるが、 年度内も難しい」 としている。
柏原農林振興事務所砂防課は、 「補正通過後に仮に順調に進捗したとしても、 着手は11月ごろ。 林地崩壊だけでなく、 道路、 農地なども一緒に復旧が進む。 測量、 設計業者や建築業者などのマンパワー不足も心配しており、 今後の課題」 としている。
市現地対策本部も 「山が怖いという認識は十分にもっている。 通常なら何でもない20ほどの雨が今は重い。 『避難準備』 を早めに出す。 財産はともかく、 命を守るためにまず避難をしてほしい」 と話している。
台風シーズンが迫る―。