「獣害が地域活性化に」
地域の獣害対策を支援し、農山村の魅力を発信しようと、今年5月、NPO法人「里地里山問題研究所」を設立、代表理事に就任した。都市住民の力を活用した獣害対策と地域活性化の両立に取り組むため、都市部からサポーターを募ったり、オーナー制度を実施。コメや栗などの栽培・収穫体験や竹林整備など里山の恵みを分かち合い、田舎暮らしの一端を味わえるイベントなどの計画を進めている。
和歌山市出身。中学生のころから大自然にあこがれを抱き、「いつか北海道で暮らしたい」。その思いを温め続け、北海道大学に進学。大学院に進み、青森・下北半島をフィールドにニホンザルの農業被害の問題解決に向けた研究に取り組んだ。そこで、「自然と折り合いをつけながら日々を営む人々の暮らしがある」ことに気づき、農村文化の素晴らしさを知った。その一方で、サルなどの獣害によって離農に追い込まれる農家を見てきた。「獣害が原因で農村が衰退していくのは辛い。田舎に関心のある都市住民に田舎の良いところばかりを見せるのではなく課題も知ってもらい、一緒に解決していく仕組みをつくれば、その取り組みの過程が地域活性化につながっていくのでは」と考えるようになった。
大学院卒業後は京大霊長類研究所へ。その後、兵庫県立大学講師と森林動物研究センター(丹波市青垣町)研究員を兼務し、サルを中心とした獣害対策への知識と経験を重ねた。
今年3月に退職。同NPOを立ち上げ、院生時代の思いを具現化するべく歩み出した。「『獣害があったからこそ、今の村のにぎわいがある』と言っていただけるような地域づくりをめざしたい」。39歳。