兵庫県丹波市の最高気温が今年最高の37.1度に達した8月1日、加古川源流、青垣町大名草の上流にある名もなき滝をたずねた。獣道と沢を歩くこと約50分、落差6メートルほどの滝が現れた。冷たい上に水量が多く、ほてった体は瞬時にクールダウン。ものの1分もシャワーに打たれてはいられなかった。
「加古川源流」の標柱がある鹿野馬神社の宮前広場から一ノ瀬谷に入り、最寄りの民家から1キロ以上上流に車を停める。地元の足立勝則さん(70)から教わった通り、崩れた作業道を進んだ。人が立ち入らない作業道は足を踏み入れるのがためららわれるほどシダが茂っていた。
3分ほどでえん堤が見え、川を見失わないよう植林の中をミツマタの枝を手で払い、シカの足跡をたどった。沢を横断するように生えたジャケツイバラ、すべる岩に気を払いながら沢を上流へ。切り立った岩に遮られ、再び山道を歩いた。
40―50メートルほどにわたってなだらかな落ち込みが続く渓谷の風情の先に落差4メートルほどの滝があった。幅が2ほどあり、水量も豊か。しかし、やや小ぢんまりしており、ここが目的地の確信がなかった。足立さんは「手前に小さな滝があり、その奥に大きなのがある」と言っていた。念のため、この日一番急な斜面をもう5分ほど上流に登ると、先ほど見たものより格段に大きな滝が目に飛び込んできた。遠目には15メートル以上落差があるように見えたが、近づくと、ちょうど真ん中当たりで2段に分かれていた。
巨岩の間を縫う清流がシャワー状に降り注ぎ、涼しい川縁より、さらにひんやりしている。滝壺はなく、岩に当たって砕ける水の音は意外と静かだった。
足立さんらは、源流のムラのPRに、川沿いの斜面に遊歩道をつけられないかと、前々から話題にしている。実際に足を運び、秘境感がある魅力的な場所だと感じた。ヤマビルさえいなければ、非の打ち所なし、なのだが…。