太平洋戦争前後に少女期を送った義積喜美子さん(84)=兵庫県丹波市春日町多田=が、戦中、戦後における自身の体験を絵本につづり、若い世代に伝える活動に取り組んでいる。これまで10冊ほどをこしらえ、依頼があれば地元の小学校などで当時の生活のようすや思っていたことを伝えるとともに、「戦争だけは絶対にしてはならない」という強いメッセージを届けている。
昭和9年に生まれ、氷上町市辺で育った。国民小学校(現東小学校)1年生のときに太平洋戦争が始まり、小学5年時に終戦を迎えた。
絵本は、いずれも自身の体験をわかりやすく記し、水彩の優しいタッチで絵を描いている。2005年に初めて描いた絵本「おばあちゃんの太平洋戦争」では、学校のグラウンドを開墾してサツマイモやカボチャを作ったこと、同地区の明光寺は沖縄から疎開してきた子どもたちであふれかえっていたこと、若い男性が上りの汽車で出征する際には石生駅まで見送り、しばらく待つと下りの汽車で遺骨となった「英霊」が親族に抱かれ帰ってきたことなど、戦中の丹波市のようすを子どもの目線で描いている。
2004年ごろ、何気ない気持ちで手作り絵本教室「丹波手作り絵本サロン」の講習に参加したことがきっかけ。当時、幼かった孫に、戦時中の体験を絵本にして伝えようと考えたという。「戦争を否定する子になってほしいと思って」と振り返る。
「出征する子どもに『死んで来い』と言わなければならなかった時代。誰もあんな目に合わせたくない。自分たちの戦争体験を通じ、平和に対する喜びを感じてもらえたら」と話している。