兵庫県篠山市沢田公民館で20日、村を荒らした大蛇に見立てた大きな鱧を“退治”し、秋の収穫に感謝する、沢田八幡神社の「鱧切り祭」が行われた。鱧切り役が出刃包丁を鱧に当て、勢い良く持ち上げてひっくり返し、退治する所作を表した。
成人し、独り立ちした祷人を祝う席に、式をしきる招伴人、ハモ切り役、ハモ切りを助ける四天王などの役が付いた19人が車座になり、膳や盃を交わす最中に全長2メートル14センチ、12・4キロもある巨大な鱧が登場。住民らは戸を叩き鳴らして“大蛇登場”を演出した。
ハモ切り役の穴瀬肇さん(43)が、まな板に横たわる鱧を包丁でしばらくなぞった後、左右に控えた四天王が棒を当てて立ち向かう様子を表現。ハモ切り役が鱧に包丁をあてて一気にひっくり返すと、住民や写真愛好家らがカメラのシャッターを切る音が響いた。
この日が誕生日という穴瀬さんは、同じ市内から移り住んで3年目。「ようやく村の一員になれたかな。鱧は重かった」と笑顔。同市前沢田自治会の岩永良一会長(68)は、「人材不足で、伝統を守り伝えていくのは大変だが、今年も無事にできたという達成感があります」と話していた。
鱧切りは、鱧を沼地に生息する大蛇に例えた伝承で、大蛇は水害を象徴したものではないか、との一説もある。水害をおさめ、秋の収穫に感謝する意を表しているという。同神社氏子の前沢田と同市北沢田で継承されている。同祭は市指定無形文化財。