兵庫県丹波市市島町の作家、西安勇夫さん(65)が、9冊目となる著書「丹波田園物語」を執筆し、東京図書出版から発刊された。増え続ける耕作放棄地にスポットを当て、丹波から日本の農業の未来を考える内容で、太陽光発電、水路管理、草刈り地獄、農会など農村の現状をリアルにとらえている。
西安さんは高校卒業後、自動車部品メーカーに勤務。アメリカ子会社の副社長などを経て退職後、「ミシガン無宿―アメリカ巨大企業と渡り合った男」で作家デビュー。今回は2年ぶりの小説。
「急で悪いんやけど、今日から田んぼを返したいんや」という言葉から始まる物語。田んぼを預けていた隣人から突然言われた主人公が、売るか、新たな貸出先を探すか、自己保全管理か、などと悩む姿を通して現在の農村の抱えている問題を浮き彫りにしている。困っている時に田んぼを借りたいという青年が神様に見えたことや、丹波市が開校を進める農業を学ぶ学校「農の学校」など、明るい話題についても触れた。
また、2014年8月に発生した丹波市豪雨災害で、改修した堤外水路の不具合に対し、行政に対する要望などのやりとり、農会の仕事、水稲作付面積目標などの話題も盛り込んだ。西安さんは「日本の食料自給率は38%。この先農村がどうなるか不安。日本人は色んな分野で仕事をしており、土を忘れているように感じる。土や農を大切にし、食べる物は自分で作り、料理もできるという意識を持ちたい。この本が食について真剣に考え直すきっかけになればうれしい」と話している。
定価1200円(税込み)。