多くの犠牲者を出した福知山線列車脱線事故(2005年4月25日発生)の教訓を踏まえ、西日本旅客鉄道株式会社JR篠山口地区連絡会は10月29日、兵庫県篠山市のJR篠山口駅構内の留置線で、乗客救護の合同訓練を行った。事故の翌年から毎年実施しており13回目。JRをはじめ、同県丹波地域(篠山市、丹波市)の警察と消防、県警鉄道警察隊、篠山市役所、ささやま医療センター、柏原病院(丹波市)ら総勢約140人が参加し、過去最大規模の訓練となった。各機関が緊密に連携を取り、迅速で的確な初動対応ができるよう、対応能力の向上を図った。
近年急増している外国人観光客にも対応するため、全寮制介護福祉士養成校「篠山学園」のベトナム人ら40人の生徒にも乗客役として協力を要請して行った。
訓練では、情報伝達、乗務員らによる負傷者の誘導、合同指揮所設置、救出・救護、負傷者の治療や救急搬送の優先順位を決める「トリアージ」などに取り組んだ。
福知山線の古市―南矢代駅間の踏切内で大型トラックが立ち往生し、大阪方面から来た快速電車(8両編成、乗客55人)と衝突。多くの乗客が負傷した―という想定で実施した。
救護班が車両に非常用のはしごを掛けて負傷した乗客らを車内から救出。重傷者は担架に乗せて運びだした。事故現場近くに設営した救護所に負傷者を収容。医師や看護師らが応急手当を施し、トリアージを行うなどした。
田中達也・福知山支社長は訓練開始のあいさつで、「この訓練を関係機関それぞれが設けている非常事態対応のマニュアルや手順を確認する機会にしてもらい、互いに顔の見える関係性を築いてほしい」と呼びかけた。
訓練を終えたささやま医療センター病院長の片山覚さんは、「病院職員は病気やけがを診るのは日常だが、大量のけが人が出る災害救護はなかなか学ぶ機会がない。訓練で得られた反省内容を来年以降の訓練に生かし、積み重ねていくことが日々の安全を支えることにつながると思う」などと総括した。