水路に落ちたカエルを救え―。 兵庫県篠山市の篠山東雲高校の自然科学部(10人)がこのほど、カエルが脱出できる水路を開発した。市販のコンクリート製U字溝の内壁にモルタルを使って、スロープやスリットを刻むなどの壁面加工を施したもので、稲岡大晟部長(2年)と部員の藤田明士君(同)は、「今後はカエルだけでなく、ほかの生きものも脱出できるかを検証していく。いろんな生きものに有効であると分かれば、業者などにも売り込み、製品化を目指したい」と意気込んでいる。彼らはなぜ、カエルを救うのか?
食物連鎖の要、落ちると登れない種類も
生徒らによると、カエルは農作物にとっての害虫を含むさまざまな虫などを食べる一方、ヘビや鳥などに食べられ、水田の生態系のなかで食物連鎖の重要な役割を果たしているという。
しかし、水田の周りのほとんどに、垂直に切り立ったコンクリート製の水路が設置されているため、カエルが移動途中に水路に落ちると、手足に吸盤のない種である▽トノサマガエル▽ツチガエル▽ヌマガエル―は、壁をよじ登って脱出することができず、そのまま死んでしまうケースが多く見られるという。
ほかの生きものにも応用を
そこで、「生きものがすみやすい農村づくり」を活動の大きな目標としている同部では、カエルの脱出を助けつつ、溝掃除の邪魔になるなど、農作業の妨げにもならない水路を開発するべく、7月から取り組みを始めた。
完成した水路は、「しののめ水路」と命名。セメントと砂を練って作ったモルタルで、U字溝の内壁に傾斜角45度、幅約3センチのスロープを設置した。また、U字溝の底部から上部にかけて、幅、深さ共に約1センチの横溝を2センチ間隔で刻んだ凸凹面をこしらえ、カエルがよじ登れるようにした。
開発実験では、コンクリートブロックを横に3個、縦に2個積み上げて水路を再現。その中に大きさの異なるトノサマガエルをそれぞれ複数匹入れ、木材や発泡スチロールでこしらえたスロープや、メッシュネットを取り付けたり、溝に垂れこめた草に見立てたシュロ紐を垂らすなどして、体の大きさに関係なく、どの方法が最も脱出しやすいか、などを探った。
同部は、今後も実験を重ねて改良を加え、さらに同様の理由で命を落としている、絶滅危惧種のカスミサンショウウオをはじめ、サワガニやアカハライモリなど、ほかの生きものにも応用できないか実験を進めていくという。