山から薬師如来が”下山” 荒廃と高齢化進み、公民館に安置

2019.03.26
ニュース丹波篠山市地域

山の上から公民館に下ろされた薬師如来像(中央)など5体の像=2019年3月17日午前11時53分、兵庫県篠山市草ノ上で

兵庫県篠山市の草ノ上自治会(37戸)の公民館でこのほど、「薬師如来像」の入魂法要が営まれた。これまでは集落内にある東尾山の山頂近くにある薬師堂にまつられていたが、山の荒廃と住民の高齢化が進み、お参りに行ける人が減ったため、像を公民館まで下ろした。住民ら約40人が集まり、山から下りてきた“薬師さん”に、家内安全や心願成就、病気平癒を願って手を合わせた。

薬師如来像の入魂式で経を唱える住民たち

入魂の法要は、近隣の寺の片瀬道昭住職が行い、住民らが般若心経を唱えるなどした。片瀬住職は、「薬師如来さんが、より身近に来られた。これまでより多くお参りいただけたら」と語りかけた。

薬師堂は江戸時代の1737年(元文2)4月の建立。集落の人たちは毎月交代で、山道を20―30分登ってお参りしていたが、山の荒廃で道中が危なくなったほか、高齢化が進んで薬師堂まで歩けなくなった人が増え、お参りの頻度も3カ月に一度、さらには年2回にまで減っていた。

「山から下ろしてはどうか」という懸案がいよいよ現実味を帯び、昨春に住民5人で移設委員会を組織。薬師如来像のほか、両脇の日光菩薩、月光菩薩など計5体を下ろし、公民館大広間の神棚横を改修して安置することに決めた。3月9日に薬師堂で抜魂法要を営んでから像を下ろした。

林茂自治会長は、「懸案事項が解決でき、大げさに言えば歴史的なこと。ただ、その歴史について知らないことも多く、みなさんの力を借りて縁起を調査し、後世に語り継ぐのも我々の役目」と話していた。

住職によると、伝染病が流行ると、病人を山に移して隔離し、病気が治るようにと薬師如来にすがった。このため、山の中に薬師堂を建て、まつられている例は、他の地域でも見られるという。

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