兵庫県丹波市柏原町柏原の「柏原赤十字病院」で3月29日、閉院式が行われた。前身病院を含め明治時代から地域密着型の医療を提供してきた同病院。関係者50人ほどが出席し、「84年の軌跡」を振り返るスライドショーが上映され、慣れ親しんだ病院の閉院を惜しんだ。今夏、柏原赤十字病院と県立柏原病院(同市柏原町柏原)が統合移転し、同県丹波市氷上町石生に新病院が開院する。
前身病院は明治30年開院
同病院は、明治30年に開院した氷上郡立柏原病院が前身。明治41年に財政上の理由で柏原町に移管され、昭和10年に日本赤十字社兵庫支部柏原診療院となった。当時は病床30床、職員25人だった。
患者が増え昭和17年に増築、日赤兵庫支部柏原病院となり、後に柏原赤十字病院と改称した。200床を超えた時代もあったが、閉院時は59床、職員数は約120人だった。
「赤十字精神、新病院へ」
閉院式で、2017年4月から、県立柏原病院と兼務で16代目の柏原赤十字病院長を務めてきた秋田穂束氏は「私自身、日本赤十字社の地域社会への奉仕に対する真摯な取り組みなど、非常に感銘を受けながら学ばせていただいた。柏原赤十字病院は閉院するが、赤十字精神を受け継ぎながら、新施設でも地域社会に貢献していくものと確信している」などとあいさつした。
また、日本赤十字社長の代理で、同社医療事業推進本部統括副本部長の矢野真氏は「84年に渡る歴史に幕を下ろすのは残念だが、地域住民のための医療を続けてきたことを誇りに思う」と述べた。
丹波市の谷口進一市長は「日赤がなくなるのは寂しいが、(新しく開院する)市健康センターミルネにその機能がしっかりと引き継がれる。地域に根付いた日赤の精神はそこでより大きく育まれていくと思う」とあいさつした。
病院支えたボランティア「旅立ちは希望。新病院でも継続を」
前日の28日には、同病院を支えた「病院ボランティア」への感謝状贈呈式があった。急激な医師減少による病棟縮小が行われた2008年に始まった「病院ボランティア」は、来院する患者のサポートや、清掃、洗濯、夏祭りやクリスマスなど季節のイベントの手伝い、伝票運びなどを担った。感謝状贈呈式には対象者23人中18人が出席し、感謝状を受け取った。
他病院で行われている活動を参考に立ち上げを提案した元丹波市連合婦人会長で、氷上郡(現丹波市)時代から日赤奉仕団の委員長を務めた荻野美代子さん(83)は、「私たちにできることをと始めた。家族も自分もお世話になった一番身近な病院」と言い、30年以上ドライフラワーを贈り続けた川上朋子さん(81)は、「職員の息子が交換してくれるので年に6回ほど新作を渡していた。喜んでもらえていたのなら幸い」と話した。
式典に出席したリハビリ科長で理学療法士の石原直幸さん(56)と井上恭子看護師長は、ともに同病院勤続30年超。「細かいことに良く気づいてもらった」「手が回らないところを助けてもらった」と感謝。閉院について石原さんは「職員は仲が良く、いい病院だった。寂しい」と言い、井上さんは、「とうとうこの日が来てしまったという思い。寂しいが私たちがやってきたことを新病院に引き継ぎたい」と前を向いた。
雛倉恵美看護部長は、「看護師が全然足りないなかで、患者の側で助けてもらった。みなさんに来てもらって、地域とつながった気がした。今日までありがとう」と涙ながらに謝辞を述べた。
ボランティア代表の増南文子さん(71)は、「長い柏原日赤のわずかの期間だが病院と共にあった。別れ、旅立ちは希望。たくさんの希望を持ち新病院でもボランティア継続を」と締めくくった。