兵庫県篠山市立篠山小学校の校庭にあり、昨年8月の台風で根元から折れたプラタナス(モミジバススカケノキ)の木を使ったオブジェが完成し、このほど、同校で児童や関係者にお披露目された。樹齢140年近いとされ、「校木」として、また地域のシンボルとして愛されてきた木。復活事業に取り組みつつ、折れた木についてもこれまでと変わらず、成長していく児童たちを見守るオブジェとしてよみがえらせた。
高さ3メートル、幅2メートルのオブジェは折れた木の根元を使い、地元、河原町の造形作家・水上雅章さん(55)が制作。校舎の正面玄関横に設置された。
作品名は、「高みを目指せ」。柿渋や炭などで防腐処理を施した木の空洞部分から上部へと、真ちゅうで作った階段を通したほか、幹の表面には真ちゅうでプラタナスの葉などをあしらった。
はしごが抜けた先の上部両側には、ウルシとイチョウで月と太陽をかたどったオブジェを配置。プラタナスを「学校」、月と太陽を「宇宙」「高み」と位置づけており、木に抱かれながら、一段一段、階段を昇ることで、子どもたちが夢や希望、目標を達成することへのエールが込められている。
また、中央廊下にもプラタナスを使ったオブジェ「勇気を持って高く翔け」を設置。木の内部に金の卵を配し、プラタナスの枝で作った羽をあしらった。
もともと樹勢の衰えから同校PTA「育正会」が中心となって再生事業に取り組んでいたプラタナス。昨年の台風で折れた後も取り組みを継続しており、今年2月には、土壌改良や苗木の移植が行われ、再生が期待されている。
お披露目式で、住民と学校、児童らでつくる「プラタナス実行委員会」の小山辰彦委員長は、「魂のこもったすばらしい作品ができた。学校だけでなく、地域の宝。折れたことは悲しい出来事だったけれど、生きる力や、みんなで力を合わせることを学んだことは大きな財産になった」と喜んだ。
水上さんは、「傷んでいるところが多かったり、倒れては大変なので安定感を持たせるなど、製作は難しかった」と振り返り、「みんなが思っているプラタナスのイメージと、作品としてのオブジェを調和できるように心掛けた。思い出の中に残ってくれたらうれしい。作家としても貴重な体験をさせてもらった」とほほ笑んでいた。