兵庫県篠山市岡野地区の「岡野ふるさとづくり協議会」が、篠山市の特産であり、同地区でも栽培が盛んな山の芋の特長や栄養分、関連商品などを掲載したパンフレット「山の芋のお話 in Okano」を作成。販売する際に芋を入れるパッケージも作っており、PRや販売促進につなげる。背景にあるのは栄養分も豊富で、粘りと濃厚な味わいが高い評価を得ているにもかかわらず、農家の高齢化などから作付け面積が減少の一途をたどっていること。農家らは、「努力して収益が上がることが一番のやりがい。栽培の盛り上げにつながれば」と期待している。
A4判11ページのパンフレットでは、一般社団法人「日本食品分析センター」による同地区産山の芋の成分分析の結果を掲載。一般的な長芋と比べ、ナイアシンとビタミンB6、アミノ酸の多くが2倍以上含まれており、成長ホルモン合成の促進、免疫力の向上、アルツハイマー予防、肥満、高血圧抑制につながることをPRしている。
また、同協議会と神戸大学、「丹波栗菓匠大福堂」(同市北新町)がコラボして作った山の芋のお菓子「Chokobe(チョコベ)」も紹介。とろろを生地に練り込んだ軽羹(かるかん)にチョコレートをコーティングしたもちもち食感のスイーツを紹介しながら、商品販売を通して、生産者に利益が還元される仕組みも掲載した。
取引価格や「優品」「秀品」「特選」などの種類も載せている。
篠山市内で約40ヘクタール栽培されている山の芋。うち岡野地区では2018年で約3・5ヘクタールが栽培されている。
栽培に手間がかかる山の芋は、農家の減少や高齢化に伴い、市全体でも収量が激減。岡野地区でも13年に7ヘクタールあったものが5年で半減している。
同協議会では、現状を変えようと、県の補助を受けてパンフレットなどを作成。制作には、元同地区担当の市地域おこし協力隊で、現在は長岡造形大学大学院(新潟県)の助教、板垣順平さん(35)が協力し、同大学視覚デザイン学科3年の酒井萌乃さん(20)がデザインを手掛けた。
酒井さんは、「現場を見たり、岡野の人たちと交流しながら山の芋について理解することの大切さを知ることができた。報告書やパッケージも岡野の人たちをイメージしながら誰でも親しめるようなレイアウトやデザインを意識した」と笑顔。同協議会副会長で山の芋栽培農家の畑利清さん(70)=今福=は、「滋養強壮など体に良いことは知っていたが、詳しい栄養分の調査は栽培農家でも知らないことが多く、とても驚いた」と言い、「このままでは山の芋はなくなってしまう。販売促進に力を入れ、少しでも農家の減少に歯止めを掛けたり、新たに栽培する人が増えてくれたら」と話していた。
パンフ、パッケージともに1000部作成。「丹波篠山味まつり」などで同協議会が山の芋を売り出す際に使用する。パンフは、市農都創造部にも置いてもらう予定。