兵庫県丹波市市島町の大杉ダムのふもと「ダム下公園」内で、幹が途中で切断されて根がないフジが、今年も満開を迎えている。地元住民は、不思議な現象に首をかしげながらも親しみを込めて”奇跡のフジ”と呼んでいるが、本紙の取材で同じフジ棚の別のフジの枝と、根がないフジが結合しているとみられる部分があることがわかった。専門家は、「根を張っているフジから栄養分をもらっているのではないか。珍しい現象」と「根なしフジ」の謎を解く。生存本能のなせる業ともいえるが、“支え合い”ともとれる植物の姿が住民の感動を呼んでいる。
水道工事で伐採も咲き続ける
フジは、縦横の幅3×6メートル、高さ3メートルほどのフジ棚に沿って生育している。対角線上に計2株のフジが植わっており、1つが「根なしフジ」。もう1つは、樹勢も良好な「根ありフジ」。
過去、同公園の清掃管理を行っていた高齢者グループの男性(82)によると、数年前、水道配管の取り換え工事の際、フジの幹と根が工事に干渉したため、1本をやむなく伐採した。ところが、翌年以降も咲き続けており、住民らを驚かせている。
「根ありフジ」に結合?
この不思議な現象の謎を探ろうと、目を凝らして、「根ありフジ」の枝をたどったところ、少なくとも1本の枝が、「根なしフジ」の残った幹に結合しているように見える個所が見つかった。
同県立人と自然の博物館(同県三田市)の自然環境再生研究部主任研究員・藤井俊夫さんによると、自然に発生した「接ぎ木」のような現象とみられるという。「断面を確認しないと実際に結合しているかは判断できない」としながら、「根がなくても花を咲かせることを考えると、結合部分で栄養の受け渡しを行っていると予測できる」と話す。
拝むと「グラウンドゴルフ上達」と地元
同公園にはグラウンドゴルフのコースがあり、地元住民を中心に憩いの場になっている。高齢者グループの男性は「不思議なことなので、地元では、このフジを拝んだり、なでたりするとグラウンドゴルフが上手になったり、ホールインワンが達成できるようになると言っている」と笑顔。「生きる力のすごさを感じる。大事に守っていきたい」と話している。