独立行政法人国際協力機構(JICA)筑波(茨城県)の事業で、日本国内の主要な地域をめぐり稲作技術を学んでいる開発途上国11カ国の研修員たちがこのほど、兵庫県丹波篠山市の農事組合法人「丹波ささやま おただ」の施設を訪問。同法人の岸本久芳組合長(70)から集落営農の仕組みや取り組み、課題などを聴いたほか、同市特産の黒大豆の栽培方法、農業用機械の説明を受けるなどした。研修員らは母国におけるコメの生産拡大と生産性の向上に向けて積極的に質問し、メモを取るなどして、知識を深めていた。
アフリカ地域など多くの開発途上国では、人口の増加に食糧生産が追い着いていないのが現状。多くの国でコメが主要穀物となっているが、栽培規模が零細で機械化も進んでいないことから生産性が低く、気候変動や病害虫の発生などで生産量も安定していないという。
さらに農業技術の普及体制が人的、資金的に貧弱で、普及員の能力が農家のニーズに対応しきれていないため、技術普及の支援を行っていこうと、JICA筑波では、毎年、「稲作技術向上」研修を実施している。
今年度も3月から、アフガニスタン、ベナン、ガーナ、リベリア、シエラレオネなど11カ国から、農業普及に携わる行政担当者11人が研修員として来日。筑波の稲作試験ほ場で田植えを体験したり、国内各所で現地視察を行っている。
小多田では、岸本組合長が、2015年に設立した農事組合法人について、「組合員49人。農地8・89ヘクタールを管理し、黒大豆を3・9ヘクタール、水稲を4・7ヘクタール、ユズを26アールで栽培している。集落の畜産農家から牛糞の提供を受け、それを発酵させ堆肥として栽培しているのが特徴」などと紹介。また、農業機械の一部を国の補助で購入したこと、作付計画に基づき、組合員が当番制で、決められた銘柄の肥料や農薬を規定量散布するなど厳格な管理のもとで栽培していることなどを説明した。
研修員たちは「契約書を交わさず組合員に仕事を任せているのか」「収益はどのように分配しているのか」など熱心に尋ねていた。
タンザニアからの研修員で、農業省で農業講師をしているヒラリ・ヒラリ・サレさん(33)は、「組合運営には、なにより組合員の信頼関係が大切だと感じた」と話すと、別の国の男性研修員が「組合組織で農業を営むメリットや必要性を感じているが、私の国では、組織のリーダーがお金を着服してしまうので補助金制度が機能しない」と嘆いた。