丹波と但馬の両「聖人」 親交物語る掛け軸寄贈

2019.06.01
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省斎が描いた山水画に池田草庵が賛をした掛け軸=兵庫県丹波市青垣町で

「丹波聖人」と言われた小島省斎が描いた山水画に、「但馬聖人」と言われた池田草庵が賛をした掛け軸が、兵庫県丹波市青垣町の称念寺に寄贈された。省斎の門人で県会議員などを務めた同町佐治の衣川箕山が所有していたもの。箕山の流れをくむ衣川龍一郎さん(66)=東京都=が、佐治の実家を解体するに際し、蔵の整理中に見つけたもので、「丹波にとどめておくべき文化遺産」として菩提寺の同寺に寄贈。同寺には、省斎の書や、郷土史家の松井拳堂が描いた省斎の肖像画があり、橋本崇史住職(50)は「寄贈された掛け軸も合わせ、機会があれば公開したい」と話している。

省斎は文化元年(1804)、同町佐治の生まれ。儒学者。柏原藩儒として藩政にかかわり、藩校「崇広館」をおこした。門人に柏原出身の田艇吉、健治郎兄弟らがいる。草庵は文化10年(1813)、養父市八鹿町の生まれ。ふるさとに私塾「青谿書院」を建て、子弟を教育。京都府知事の北垣国道、東京大学総長の浜尾新、文部大臣の久保田譲らを育てた。母親は同町佐治の生まれ。

崇広館の開設にあたって、同館の門の命名をめぐり、省斎は草庵に手紙で相談、計4通の手紙をやりとりするなど、二人はたびたび手紙を交わした。草庵が省斎を訪ねてくることもあり、親交が深かった。寄贈された掛け軸も二人の交友ぶりを物語っている。

掛け軸を所有していた箕山は、書に秀でた文人として知られ、画家の富岡鉄斎がたびたび箕山宅に逗留した。

掛け軸とあわせて、省斎の生涯について書いた松井拳堂著の「兜山余芳」も同寺に寄贈した。

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