兵庫県丹波篠山市は、運転免許証の自主返納者が急激に増加し、返納者に対してバス利用券などを交付する予算の追加が必要として、このほど開かれた同市議会本会議に補正予算165万円を計上し、可決された。例年、年間10数件だった記念品の申請者が、今年度は6月20日時点で計38件と急増し、年度内の申請を340件になると見込んでいるため。市は4月に東京・池袋で発生した87歳の男が運転する車の暴走事故と、その後の高齢者の免許返納ムードが要因と分析している。当初予算では記念品申請は10件ほどと見込んでいたことから、現在、「待ち」が出ており、補正予算の可決を受け、速やかに記念品を進呈する。
同市では2008年から独自の制度を創設し、65歳以上の人が自主的に免許を返納した場合、市のコミュニティバスの利用券5000円分などを進呈してきた。
返納者は返納時にもらえる運転免許取消通知書か1100円を負担して取得できる運転経歴証明書を市市民安全課の窓口に持参することで、記念品をもらうことができる。
篠山警察署管内では例年160人ほどが免許を返納。市の記念品を申請する人は10数件にとどまっていたため、市は今年度当初予算で記念品の費用として5万円を計上していた。
ところが、池袋の事故後、免許返納者が急増し、4月には1件のみの申請だったが、5月には16件、6月は20日までで21件の申請があった。
このため、当初予算で費用を確保していた10人には記念品を進呈できたが、残りの人には進呈できず、補正予算を組むことになった。例年の33倍となる165万円の根拠は、今後、年度末までに毎月32件の申請があると仮定している。
同課は、池袋の事故やその後の報道が急増の要因とし、「あの事故がなかったらここまで増えていないはず。それくらい衝撃的な事故だった。かなり返納への意識が高まっている」と言い、「今年6月の市広報で記念品制度を紹介したことや、同署も制度をPRしてもらったこともある」とした。申請に来庁した人のほとんどが家族に伴われてのものだったという。
同課は、「自主返納が交通安全につながれば。運転に不安を感じている人がおられたら、ぜひ、免許を返納し、記念品を申請してほしい」と呼びかけている。