1人で活躍「3つの顔」 農家に花火師、蔵人も 季節ごとに「やりたいことを」

2019.07.27
ニュース丹波市地域

農家、花火師、蔵人と「3つの顔」を持つ中川さん。バックにそびえる「小富士山」を見ながらの農作業が好きという=2019年7月22日午前10時18分、兵庫県丹波市春日町多利で

農家、花火師、蔵人…3つの顔を持つ男―。兵庫県丹波市春日町の農家・中川清二さん(34)が、農業の傍ら夏は花火師、冬は蔵人として多彩に活動している。「一つのことを突き詰めてやるより、季節ごとにやりたいことに取り組むのが好き」と言い、この時期は酒米を中心とした作物を栽培しながら、各地で花火を打ち上げている。28日には、2年ぶりに花火大会が復活する同市市島町の「川裾祭」に花火師として参加し、夜空に大輪の花火を咲かせる。

名古屋市出身。2013年、友人に誘われ丹波市に移住し、同市春日町で友人と共同生活しながら雑貨販売をしたり、草刈り代行サービスなどに取り組んだ。農業を始めて3年目になり、現在は酒米や小豆、黒豆などを栽培している。毎週水曜には、同市内のNPO法人と連携し、地元農家が生産した農作物を神戸市のデパートの一角で販売している。

花火は5年ほど前、友人の紹介で花火打ち上げ企業の下請け会社に顔を出すようになったのが最初。「人があまりやっていないことに興味があって」と語る。

中川さんが手掛けるのは花火の「仕込み」と呼ばれる作業で、ステンレス製の筒に花火玉を詰めたり、導火線をつなぐなどしている。これまで岐阜県下呂市や、岡山県鏡野町の花火大会などにも行き、複数の花火師とともに打ち上げた。300発ほどを打ち上げる今年8月の兵庫県豊岡市城崎町の花火大会は、一人で現場に入るという。「お客さんの歓声に感動して震える。全てが無事に終わるまでは緊張していますが」と笑う。

14年冬から丹波市の酒造場「山名酒造」で蔵人として酒造りにかかわっている。毎年10月中旬に蔵入りし、翌年の4月まで泊りや通いを繰り返して作業に当たる。酒米の洗いのほか、酒米や麹、水などをタンクに入れ、櫂を使って攪拌する「櫂入れ」なども行う。昨年は、自身が育てた酒米・五百万石で仕込んだ純米吟醸酒が完成し、数量限定の商品にもなった。

農家、花火師、蔵人と“3つの顔”を持つ中川さんは、「どれも楽しいですが、特に農業は以前から取り組んでみたかったこと。耕作放棄地は増えていく一方だが、何とか農地を守るとともに活用方法を考えたいですね」と話している。

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