篠山警察署の森江満署長から「県のじぎく賞」を贈られる北山さん（左）＝2019年8月1日午前9時、兵庫県丹波篠山市郡家で

今年7月、兵庫県丹波篠山市内で発生した交通事故現場を通りかかった際、クレーン車を使って事故車両の下敷きになっていた男性を救助したとして1日、同県三田市の「三田レッカー株式会社」に県の善行表彰「のじぎく賞」が贈られた。

篠山警察署によると、7月20日午後3時10分ごろ、丹波篠山市今田町東庄の県道で、路肩に停車中だった軽トラックに同市内の60歳代の女性が運転する普通乗用車が追突。持ち主で、軽トラックの前方にいた同市内の70歳代男性が、はじかれてきた車体の下敷きになった。

直後に現場を通りかかったのが、帰社途中だった同社のクレーンオペレーターの北山英和さん（46）＝同県西脇市。事故のようだが、運転席に人がいない軽トラックを不審に思ってよく見ると、車体の下部から足が見えた。

「これはあかん」―。

すぐに停車して確認したところ、車体にすっぽりと挟まった男性は顔などから出血しており、意識がなかった。動転している加害者の女性に119番を依頼しつつ、「最初、男性を見た時はもう亡くなっていると思った」という北山さん。それでも早く外に出してあげたいと考えた。

引き出そうとしたものの人力では難しかったため、軽トラックの前方部にワイヤーをかけ、クレーンを使って車体をわずかに持ち上げ、救出に成功。男性は外に出ると意識を取り戻したという。

近くの人も集まっており、その中に看護師の女性もいたため、止血などの応急処置を施し、到着した救急隊員が病院に搬送。男性はろっ骨や腕の骨を折る重傷だったが命を取り留めた。

トラックドライバーなどをへて、同社には入社1年目の北山さん。「とにかく無我夢中だった。被害者の方の命が助かって、本当に良かった」と言い、「自分がたまたま通りかかったり、近くに看護師さんがいたりと、男性はこれで死ぬ人ではなかったんでしょうね」と話す。

そんな北山さんは、ドライバー時代にも交通事故現場に遭遇し、10歳代の女性を救助したことがあるそう。「なぜかわからないけれど、こういう現場に遭遇することが多いです」と不思議がっていた。

北山さんの活躍に、同社の森岡直弘社長（86）は、「よくやってくれたな、と思います」と笑顔を浮かべていた。