琉球民謡で「最高賞」 秘めたシニアの意地 「粋なおっちゃんに」

2019.08.28
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琉球民謡のコンクールで「最高賞」に合格した瀬戸さん=兵庫県丹波篠山市黒岡で

琉球民謡に取り組んでいる兵庫県丹波篠山市黒岡の瀬戸洋美さん(68)がこのほど、沖縄県うるま市で開かれた「民謡コンクール」(琉球民謡協会主催)で最高賞に合格した。演奏や歌唱はもちろん、三線の持ち方や立ち居振る舞いまでが審査対象となり、今回、5度目の挑戦で念願を達成した瀬戸さん。「肩の荷が下りたというのが本音」と苦笑しつつ、「芸の道に近道なし。上達の早い若い人についていけない時もあるけれど、少しはがんばっているシニア世代という姿を見せられたかな」と喜んでいる。

コンクールは琉球民謡の普及発展などを目的に毎年開催。身なりや音程、節回し、声量などの項目で審査が行われた。

着物姿で三線を手にして登壇した瀬戸さん。静寂に包まれた中、直立不動で課題曲の民謡「ヤッチャー小(グァー)」を歌い始めた。

減点が重なると途中でブザーが鳴って終了。瀬戸さんは過去、緊張で頭が真っ白になり、歌詞の順番を間違えるなどして2度、ブザーを体験したことがあった。「自分の声や息遣い、三線の音、足音。それしか聞こえない。かなりのプレッシャーでした」と振り返る。

それでも昨秋からの猛特訓が実を結び、堂々たる演奏で見事、最高賞に合格した。

2007年、友人たちと訪れた石垣島で三線のライブを見て、「これだ」と思った。

「三線1本で客と一体になり、最後はみんなで踊る。そして、こんなにも泡盛に合う音はない。沖縄の文化も含めて、とても魅力に感じました」

退職後、尼崎市で開かれている教室に入門。琉球民謡協会関西支部役員で、人間国宝・照喜名朝一氏を師匠に持つ向井敏二さんに弟子入りした。

中学時代からギターやマンドリン、トランペット、ピアノと、音楽に親しんできた瀬戸さんは、すぐに琉球民謡のとりこになり熱中。10年には同コンクールで新人賞、13年には優秀賞に合格した。

ところが、15年以降、最高賞に挑んだものの4回連続で不合格。同期入門の若手の中には最高賞を取り、教師免許まで取得した人もおり、しみじみとギャップを味わった。

それでも心が折れなかったのは、始めたものは途中で投げ出さずに極めたいという性分と、師匠やともに練習に励んできた仲間のおかげだ。

念願を達成し、勝利の泡盛に酔いしれた瀬戸さんは、「ただのシニアとして過ごすよりも、何でもいいので取り柄のあるシニアを目指したい。『味のあるおっちゃん』になりたい」と笑顔。今後の目標は、「地元で一人でも多くの仲間を増やしたい。また、琉球民謡はただ楽しいだけでなく、戦争の歴史も含んでいる。沖縄のことをもっと知ってもらう活動ができれば」と意気込んでいる。

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