知ってますか?日本版ハロウィン―。中秋の名月を前に、お月見イベント「お月見どろぼう」がこのほど、兵庫県丹波市春日町下野村地区で初めて行われた。子どもたちが地域の家を回り、玄関先に住民が用意したお菓子をもらうという催しで、子どもたちと住民のつながりを深めようと同地区の青年会「下野村若人会」(安達雅訓会長)が企画。子どもたちは「お月見どろぼうです」などと住民に声をかけながら、手持ちの袋をお菓子いっぱいにして喜んでいた。
同会によると、日本には中秋の名月の日に限り、他人の畑の芋を盗んでも良いという風習があったという。ただ、道端から片足だけ踏み込んだ範囲でという暗黙の了解があったという。子どもたちは月の使者と考えられ、盗まれても縁起が良いとされ、畑は豊作になると信じられたという。背景には地域内の「助け合い」があるとされる。やがて芋が供え物の団子に変化し、現在は用意されたお菓子をもらうという形で、各地で「お月見どろぼう」の風習が残っているという。
愛知県日進市で「お月見どろぼう」が行われていることを知った安達会長(46)が、下野村地区でも同様の催しをと提案。安達会長によると、以前に比べ、地域内での交流の場が少なくなり、子どもと住民とのかかわりが薄くなっていることから、つながりを深めるきっかけにしたかったという。
この日、同地区の公民館に22人の子どもたちが集まり、「お月見どろぼう」の起源や意味などを学習した上で、3班に分かれて地域に繰り出した。事前に同会が準備した箱に各家庭がクッキーやビスケットなどを入れており、子どもたちは仲良くお菓子を分け合い、それぞれが持った袋をいっぱいにした。空にした箱の中には、自分や親の名前、お礼の言葉などを書いたメッセージカードを入れ、感謝を伝えた。
参加した女の子(7)は、「お菓子をいっぱいもらった。袋がいっぱいになってうれしかったよ」とご満悦。安達会長は「子どもは地域の人と話ができ、地域住民は子どもの笑顔が見られてうれしかったみたい。地域でのつながりが今まで以上に深まっていけば」と話していた。