脊髄損傷のため、車いす生活となったアイドルグループ「仮面女子」の猪狩ともかさんが初主演する映画「リスタート:ランウェイ~エピソード・ゼロ」(帆根川廣監督)が完成し、あす20日に横浜市で完成披露上映イベントが開かれる。事故で車いす生活になった女性が”再出発”をめざす作中には、「車いすのファッションモデル」として活躍している兵庫県在住の日置有紀さん(29)も出演。自身も銀幕デビューとなる日置さんは、「『障がいのある人が出演しているから』ではなく、普通に一本の映画として『おもしろかった』と思ってもらえたらうれしい」と笑顔で話している。
猪狩さんが演じるのは、”車オタク”の主人公・ヒナタ。父親の影響でカーレーサーになることを夢見ていたものの、交通事故により、車いす生活になる。しかし、一台のスポーツカーとの出会いから、再び、車への情熱を思い起こす―というストーリー。
日置さんは、ヒナタが出会う、電動車いすに乗る女性「メミ」の役で出演。ある場所で2人は出会い、メミがヒナタに夢を語る。
猪狩さんはアイドル生活を送っていた昨年4月、強風で倒れた看板の下敷きになり、脊髄損傷で車いす生活となった。しかし、4カ月で復帰し、東京都からパラスポーツ・バリアフリー応援大使に任命されているほか、東京パラリンピックの成功に向けた懇談会のメンバーとなるなど、活躍の幅を広げている。
日置さんも18歳のころ、脊髄の病のために四肢体幹機能障害となり、車いすでの生活を送っているが、「車いすモデル」としてファッションショーをはじめ、テレビなどのメディアでも活躍している。
2人のほか、ヒナタの母役に女優の手塚理美さん、ヒナタの車を改造する整備士役に俳優の忍成修吾さんが出演。バイク世界選手権に参戦したこともあり、車いすユーザーでもある青木拓磨さんも登場する。
また、資生堂トップヘアメイクアップアーティストとして世界中で活躍する原田忠さんがビューティーディレクションを務める。
映画は日置さんと帆根川監督が共同代表を務める団体「バリアフリー・フィルム・パートナーズ」が企画・制作。今作は、今後、制作する長編映画「ランウェイ」へと続く。
帆根川監督は、「本来、とても明るい猪狩さんは、後ろ向きなヒナタを見事に演じきった。日置さんも演技の練習を重ね、自然な笑顔が出るなど、負けず劣らずすばらしかった」と称え、「映画の完成で当会の目的である『心のバリアフリー』の普及・啓発に大きな前進となる。映画を通して、自然に心のバリアフリーについて考えてもらうきっかけになれば」と期待する。
日置さんは、「本当の車いすユーザーが出演しているので、ユーザーの人にはより共感してもらえるかもしれない」とほほ笑みながら、「障がいがあっても、普通の役者として活動するような人が出てきてくれたら」と話している。
映画は9月末以降、インターネット上でも配信予定。詳細は同団体のホームページで公開するという。