「雨ピリピリ」「じゃいけん」って何―。兵庫県の甲南大学文学部日本語日本文学科の4回生6人がこのほど3日間かけて、同県丹波篠山市の旧大芋(おくも)小学校で、大芋地区の住民を対象に方言調査を行った。3日間で5―94歳までの31人が協力。学生たちは、日常生活の中で使う言葉や単語、独特の話し方などを尋ねていた。今後、調査結果をもとにそれぞれにテーマをしぼり、卒業論文に仕上げるという。
指導する都染直也教授は、1990―91年にかけて旧多紀郡(現丹波篠山市)で方言を調査した経緯がある。また、地元大芋地区に住む京都薬科大学准教授の桑形広司さんから学生の合宿などに大芋小を使ってほしいという話も聞いていた。今回、卒業論文の題材を考える中で、学生の中に丹波篠山市出身者がいたこともあり、約30年ぶりに再調査を行うことにした。
調査は、約120項目にわたり、日常生活の中でよく使うものや、目上の人など話す相手による言葉の使い分け、「雨がピリピリ」など、独特の語法を尋ねた。「見ることができなかったことは『見れんかった』か『見れへんかった』か」「ごみは『捨てる』か『ほかす』か」などを答えてもらい、住民らは「値段を聞く時に、店では『いくら?』と聞くけど、家では『これなんぼやった?』って言うなぁ」などと和やかに対話していた。
幼い子どもには「『じゃんけん』か『じゃいけん』か」など遊びのことを中心に尋ねたほか、大芋地区内の小字約140カ所の発音と認知度などについても調査した。
調査に協力した女性(41)は、「改めて普段何気なく使っている言葉を聞かれても『どやったかなぁ』となりますね」と笑っていた。
都染教授は90―92年にかけて、当時、方言調査が進んでいなかった、丹波篠山市の隣、旧氷上郡(現丹波市)を含む丹波地域で調査を実施。県内3分の1以上の市町でも実施し、これまでに地図上に言葉の違いの分布をまとめたり、鉄道沿線上で言葉の境界を調べるなどしてきた。同大方言研究会として「兵庫県多紀郡氷上郡接境地域言語地図」などの資料を、丹波篠山市中央図書館にも寄贈している。
都染教授は、「丹波篠山の言葉が30年を経てどのように変わっているのか、変わっていないとするなら何が変わっていないのか、時代と言葉の関わりについて、これから分析したい」と話していた。