兵庫県丹波市で通所介護事業所を運営する会社が、認知症改善効果を期待し、爽やかな香りがする雑木、ヒメクロモジのエッセンシャルオイル(精油)を製造、9月26日から販売を始める。医学論文で、認知症改善効果が認められている成分を同木が含んでいる。同社は、商品化を足掛かりに、共同研究相手を見つけ、医学的に効果の有無を明らかにする意向だ。
地元の山に自生するクロモジ属のヒメクロモジの枝と葉を水蒸気蒸留した「KOHARU 姫黒文字」(5ミリリットル瓶入り、税別4500円)。原料1キロから採取できるオイルは3-4ミリリットルとわずか。
製造・販売元は、地元の課題を解決するために、地元の11自治会らが出資して作った同市氷上町の株式会社「かどの」。
商品の成分を国立研究開発法人森林総合研究所(つくば市)で分析したところ、鳥取大学の医学論文で認知機能改善効果があるとされた「ローズマリー+レモン」「ラベンダー+スイートオレンジ」に含まれる「リナロール」(華やかな甘い香り、鎮静・抗不安など)を約16%、「リモネン」(柑橘系のレモンの皮の香り、抗菌・組織再生・消化、食欲増進)も約11%、「1、8シオネール」(すっきりした香りと味、免疫力増強など)、「α―ピネン」(松、針葉樹の香り、疲労回復)など、複数の有用成分を確認した。
同社は認知症予防・改善効果に期待し、施設の利用者に同精油をしみこませたペンダントを首から提げてもらっているが、ヒメクロモジ精油が認知症に効果があるという先行研究がないため、医療・保健系の大学や研究機関ら共同研究ができる相手先を探している。
認知症への有用性は未解明なものの、すっきり鮮烈な香りのクロモジ精油はリラックス効果があるとして、アロマセラピーの世界で人気があることから、アロマ好きな層に一般販売する。
「かどの」取締役で、同社の里山資源活用部門「里山ラボ」製造責任者の三輪邦興さん(70)が2年前に精油化を発案。部品を集めて蒸留装置を手作りし、昨年から試作を重ねた。「商品化まで漕ぎつけた。これをきっかけに、未活用の里山資源の利用にさらなる弾みをつけたい」と言い、八尾社長は、「地域のためになることなので、何とか共同研究相手を見つけたい」と話している。