兵庫県丹波篠山市は、災害時を想定し、同市の東岡屋自治会をモデル地区に、体の不自由な要援護者一人ひとりに応じた「避難のための個別支援計画(災害時ケアプラン)」の作成作業を進めている。県の「防災と福祉の連携促進モデル事業」を活用。自治会役員や、要支援者の隣近所の住民をはじめ、要支援者を日頃からケアし、心身状況を理解しているケアマネジャー(ケアマネ)やヘルパーらが一堂に会して開いた個別ケース会議をもとに10月6日には避難訓練を実施し、より実効性の高い計画作成をめざしている。
同自治会では、車いす利用者や脚が不自由な住民4人をケースモデルにしている。3日に分けて4人の個別ケース会議を実施。9月21日には地域拠点の富山会館で、難病で電動車いすを利用している73歳女性ら2人のケース会議が行われた。同女性のケース会議には、自治会役員や女性の”ご近所さん”、女性を日頃ケアしているケアマネやヘルパー、市の担当者や関係機関など約20人が参加。震度6の地震が発生し、電気が使えない―という想定で、避難方法を考えた。
女性は難病のために、▽相手の話は理解できるが話せない。文字ボードでのコミュニケーションはとれる▽家から出る際は電動リフトを使用▽欠かすことのできない薬や非常時用の持ち出し袋がある―といった情報を提供。その上で、▽電話やインターホンで避難を促すことができない▽電動リフトが使えない中で、段差のある外へいかに運び出すか▽服薬や持ち出し袋がどこにあるか分からない―などが話し合いのポイントとなった。
実際に電動車いすに乗った女性を持ち上げるなどして必要人員を確認したり、女性やケアマネの了解をとりながら▽隣の人が家に入って声をかけ、ヘルパーを呼ぶ▽車いすは後ろ向きに段差を下ろすのが基本だが、女性宅の出口周辺の状況から、注意しながら前向きに下ろす▽誰でも分かるように、電動車いすの操作方法や常備薬などの保管場所を書いたものを作っておく―などとまとめた。
10月6日の避難訓練でこれらの方法を実践し、課題を検証。10月中にも同計画を完成させる。同地区の谷田章男自治会長(73)は、「当事者の周囲の方々に意識を持ってもらうことが何より大切で、その点で今回のケース会議は有意義だった。次の避難訓練で、しっかりと仕上げをしたい」と話している。
市長寿福祉課は、「誰一人とり残すことのない防災を目標としているが、行政だけでは無理」と、地域住民や福祉専門職とのつながりに期待している。