88歳を筆頭に80歳代の女性4人が同じ職場で、京都市の老舗企業から注文を受けた和装バッグの製造に励んでいる。兵庫県丹波市市島町の高見小夜子さん(88)が自宅の敷地内で営む「高見縫製所」。勤務時間は月曜日から土曜日までの午前8時―午後5時だが、用事があれば出退勤は自由。「気楽な職場です」(高見さん)という縫製所で、観光で来日する外国人らに向けた、浮世絵などがデザインされたバッグを4人が力を合わせて作っている。きょう16日は敬老の日ー。
働いているのは高見さんのほかに、吉積洋子さん(80)、高見愛子さん(88)、土田恵津子さん(82)。高見さんは、11人きょうだいの三女で、吉積さんは五女。愛子さんは、きょうだいの三男の妻という間柄。
50年ほど前に縫製所を立ち上げた。それまで近所の縫製所で動力ミシンを使って働いていた高見さんだが、大阪にいた長女の縁で、ハンカチやタオルなど多彩な布製品を扱っている老舗企業を紹介され、独立。以来ずっと、その企業の仕事を請け負っている。
従業員は、多い時で18人を抱えた。縫製所で6人が働き、近隣町などに住む女性に内職仕事として外注していたという。座布団カバーや法被なども作っていた。
企業から布や裏地、ひもなどの材料が届き、4人が分業をして製造。高見さんはミシンで縫い、ひもを通す穴をあける仕事をしている。歌麿の美人画、北斎の赤富士などの浮世絵や、舞妓さんなどがデザインされたバッグを、ひと月で約1500点作っている。
3年前から働き始めた吉積さんは「今も姉と一緒に仕事できることをうれしく思います」と言い、同じく3年目という土田さんは「みんな、いい人ばかりで楽しく仕事をさせてもらっています」とほほえむ。土田さんは、吉積さんが「取締役」と評するほど、几帳面な仕事ぶりで製品に不良品がないかのチェックをしている。高見さんと同様に夫を亡くし、一人暮らしをしている愛子さんは、「ここに来るのが楽しみ。おかげで元気に暮らしています」と話し、3人は「この年でお給料がいただけ、ありがたい」とにっこり。
今は免許証を返納しているが、ドライブが好きで自ら車を運転し全国各地を巡ったという”活動派”の高見さん。「今も仕事ができることを幸せに思います」と話している。