兵庫県教育委員会の「ひょうごスーパーハイスクール研究開発」の指定を受けている篠山産業高校でこのほの、企業のマーケティング戦略について学ぶ講座があり、全校生徒が受講した。高校生が自ら丹波篠山の魅力を再発見し、世界に向けて発信する力の養成、高い専門分野を持った人材の育成がねらい。入門編として流通科学大学商学部の清水信年教授(47)が「コカ・コーラはなぜ1秒間に4万本飲まれるのか」と題して講義を行った。今後、3年生が清水教授を講師に迎え、マーケティングに関するワークショップなどを行い、さらに理解を深める予定。講義の趣旨は次のとおり。
コカ・コーラ(以下、コーク)は全世界で1秒間に4万本飲まれているという。その価値を評価した人が買い、飲んでいるということ。
コークは1885年にアメリカで誕生し、その少し後にはペプシ・コーラ(以下、ペプシ)が生まれた。100年以上にわたり、激しい戦いを繰り広げているが、コークに軍配が上がっている。
ペプシは1960年代から、見た目は同じのコークとペプシを、それぞれ商品名を隠して試飲してもらい、「どちらがおいしいか」を尋ねる調査を全米で行ったところ、6割が「ペプシがおいしい」と答えた。一方のコークも同様の調査を行ったが、「6割が『ペプシがおいしい』と答えた」という結果を公表している。(この日の講義でも、生徒5人が同様の方法で試飲したところ、3人が『ペプシがおいしい』と答えた)
味で比べると、ペプシの方がおいしいと分かった。しかし、売れているのはコーク。結論から言うと、「コカ・コーラ社の方が、マーケティングが上手だから」だ。
コークは当初、「店に行って飲むもの」だった。瓶や缶に入れて売られてはいなかった。戦時中、故郷を離れ、命をかけて戦っている兵士に郷愁を感じる飲み物としてコークを届けるために、濃い原液を戦場近くに運び、炭酸水で割って販売した。今も同じ方法で全世界で飲まれている。いかに「飲みたい」という気持ちをつくっていくかを重要視している。
6本セットのファミリーパックを発売し、家の中で飲む機会を増やしたり、バレンタインに向けて幸せそうなカップルをデザインした広告を出した。コークは「おいしい」という売り方は一度もしていない。楽しい時、エキサイトする時に飲むのがコーク―というPRの仕方をしている。
コークのイメージキャラクターは、現在は白熊だが、その前はサンタクロースだった。白熊もサンタクロースも、寒い所から来たという点で共通している。暑い時はほっといても売れる。コークは喉が渇いた時に飲むものじゃなく、楽しい時、みんなでわいわいとやりたい時に飲むものだというイメージ戦略で、一年を通して飲んでもらおうとしている。
企業が自社の製品をどうやって消費者に知ってもらうか、一方でどんなものが消費者から選ばれるかという様々な仕組みがある。それを学ぶのがマーケティング論だ。