昨年5月に小宮3基の銅板ぶきの屋根が盗まれた兵庫県丹波市青垣町の浄丸神社でこのほど、小宮の新調を祝う神事と、寄進者に感謝する式典があった。夏場でも境内を流れる滝の冷気で涼しい同神社が気に入り、たびたび涼みに来ていた神戸市の男性が寄進。氏子らは「夢のような話」と喜び、男性に感謝状を贈ると共に記念石碑を建て、篤志に深く感謝した。
寄進したのは会社社長の小西秀勝さん(52)。美容院のボイラーや循環装置の整備の営業先が丹波市内にあり、10年ほど前にたまたま神社に立ち寄った。苔むした巨岩があり、真っ青な水を集めた滝がある神社が気に入り、以来、仕事の合間に涼を求めて訪れていた。
昨年訪れた際、ブルーシートで覆われた小宮の異変に気付き、インターネットで丹波新聞が報じた「銅板泥棒」の記事を見つけ、災難を知った。観光協会を通じて修理費を寄付したいと申し出た。当初は一部寄付の予定だったが、なかなか修理が進まない様子に地元の苦境を察し、3基全てを寄進することにした。
普段、同神社をまつっている地元の老若男女約30人が式典に参列。足立敏幸自治会長(63)は、「見積もりを取ると570万円と言われ弱っていた。寄付の申し出に『世の中にはとんでもない人がおってや』と思ったが、『何かの御縁、三社とも寄付する』と言われ、もう、ありがとう以外の言葉がない」と謝辞を述べた。
小西さんは「喜んで頂いて恐縮する。子どもたちが手を合わせる場所を残せて良かった」とあいさつ。「あちこちの神社に行くが、寄進は初めて。これだけきれいな空間はなかなかなく、これからも残ってほしいと思い、できることをさせてもらった」と話していた。
水の神をまつる同神社は、110―120年前に作られたと伝わっている。浄丸神社がある稲土自治会は、境内に建てた奉納碑に小西さんの徳業を刻み、後世に伝えていく。