9月20日から26日は動物愛護週間。昨年度、動物虐待事件が過去最多となり、今年6月には改正動物愛護法が施行され、虐待への罰則がより厳罰化されるなど、動物の命を守ることが重要視されている。虐待にはさまざまな種類があるが、「遺棄」することも一つ。オープン4年となった兵庫県丹波篠山市南新町にある猫カフェ「くつろぎ古民家 まめ猫」には、これまで4匹の捨て猫があった。店主の中町結紀さんは、「きっと『ここならなんとかしてくれる』と思われたのかもしれないけれど、猫カフェは猫を捨てるところではないことをわかってほしい」と訴える。
同店には現在、20匹の猫がいるが、ほとんどは和歌山県の動物保護団体から中町さんが引き取ってきた元捨て猫(保護猫)たち。カフェの従業員として、“第二の猫生”を歩んでいる。
そんな店に最初の1匹目が捨てられたのは、オープンからわずか1カ月後のこと。店の前に車が止まったかと思うと、降りてきた男性が中町さんに段ボールを渡し、「助けてください」とだけ告げて走り去った。開けてみると猫がいた。
次は大雨の日。玄関先に段ボールが置かれ、上に重しがしてあったものの、隙間から抜け出た猫がびしょ濡れになって震えていた。3、4匹目も同じく玄関先の段ボールの中で身を寄せ合っていた。
4匹中3匹は常連が引き取ってくれた。最初の1匹は中町さんが面倒を見ることにし、今ではカフェの一員として生活を送っている。
遺棄した人は、「1匹増えても大丈夫だろう」「猫カフェだから、なんとかしてくれる」という発想かもしれないが、エサ代や病気がないかなどの検査、避妊・去勢手術など費用はかかる。何より、その猫の命が尽きるまで面倒を見るという「責任」を丸投げしていることになる。
中町さんは、「引き取り手があったのはたまたま。カフェの一員にするのもすべてできるわけではない」と言い、「捨て猫を見つけたのか、自宅で生まれ、もらってくれる人が見つからなかったのか。いずれにしても、『幸せになってほしい』と考えてのことだと思うが、捨てる前に相談してほしかった」と憤る。
また、猫カフェへの遺棄は知人の店でもあると言い、「猫カフェがオープンした時に、お客さんよりも引き取りの相談が多かったという話も聞いた」と話す。
一方、遺棄せずにきちんと事情を伝えてくる人もいる。中町さんは店内に猫の写真などを置き、来店した人が引き取ってもらえるように「マッチング」をしている。
猫好きの中町さんがカフェを開業したのは、猫たちによる癒しを伝えることと、「保護猫」という存在を知ってもらいたいという考えからだ。猫とのふれあいを求めて、多くの人が来店しているが、「とても儲かってはいません。営業が終わった後に、猫たちとの時間を独占できることだけが特権です」と苦笑する。
猫を拾おうとする人には知っておいてほしいことがある。
「昔は猫を飼っていても自由に外に出ていたけれど、現代は家の中で飼うのが基本。真冬や真夏に子猫が死にかけている場合以外は、外で猫を見つけたとしても自宅で飼えないのならば、手を出さないで。また、今飼っている人も、安易に子どもを産まないように、避妊・去勢をしてほしい」
動物愛護週間が動物の命について考える時間になれば、と祈っている。