小学生の夏休みの自由研究を表彰する兵庫県丹波篠山市の企画「篠山ロータリー科学賞」で、篠山小学校6年の逢澤仁君(12)の研究「ようこそ!昆虫館へ!」に最優秀賞が贈られた。昆虫が大好きで自ら標本を作っている逢澤君が、自宅の車庫を”一日限定の昆虫館”にし、準備から開催までを”館長”の立場からつづった手記。最優秀賞の受賞に、逢澤君は、「信じられなかった」と目を丸くした。昆虫館開館に秘めた思いは、普段、嫌われがちな虫の大切さを広めること。「食物連鎖があり、虫がいないと地球は成り立たない。虫たちの大切さを少しでも多くの人に知ってもらえたら」と話していた。
幼稚園に上がるころ、大阪から引っ越してきた逢澤君。都会では目にする機会が少ない多種多様な虫たちに心を奪われた。網を持って駆けまわる姿を見た近所の人から、「丹波篠山自然塾むしクラブ」に誘われ、すぐに昆虫少年になった。
手作り昆虫館の開館は以前からの野望。各地の昆虫館を訪れ、標本の数などスケールの大きさに「圧倒的なインパクト」を感じたことから、コツコツと標本づくりにいそしんできた。
以来6年間、昆虫一筋で突き進み、市内で捕獲した昆虫の標本は102種に。中には市内では初めて確認されたアカアシクワガタ(メス)もある。
7月下旬から家族と日程調整を始め、8月11日の開催を決定。その後、集めた標本を整理し、紹介コメントを書いた紙も制作した。
目玉の一つとして出そうとしたミドリシジミの標本の羽がちぎれ、「ぼくはその後40分くらい大泣きした」、学校のクラスメートに開館を宣言し、「ぼくはさらに本気になった!」など、開館に至るまでに起きた出来事や思いを雰囲気たっぷりにつづった。
開館した昆虫館には、標本のほか、生きた虫コーナーや、逢澤君の愛読書を紹介したコーナーを設け、自宅の外には”副館長”で、弟の同校3年生の玄君が制作した看板も掲げた。
結果、約50人が来場。近所の人や同級生の他に観光客も訪れ、「こんなきれいなチョウが篠山にいるの?」「ナナフシは何を食べているの?」などと、来場者から質問もあったそうで、「自分がしていることを知ってもらえてすごくうれしかった」と話す。
将来の夢は昆虫の研究者。目下の目標はアカアシクワガタのオスを見つけること。「次は高校3年生くらいに昆虫館を開けたら」と意気込む。
科学賞は篠山ロータリークラブ(河合岳雄会長)が主催。楽しみながら、研究できるようにと昨年から開催している。審査では、逢澤君の作品は、何年もかけてひたむきに努力した結晶であることが高く評価された。