江戸時代から兵庫県丹波篠山市に伝わり、“門外不出”とされる菊の品種「お苗菊」が見ごろを迎えている。
お苗菊は、旧篠山藩主の青山忠良が天保―弘化のころに幕府から拝領し、家臣に分け与えたとされる純日本種の中菊。一度満開になった花が、花弁の裏を見せて巻き上がる特徴を持つ。
昭和初期に一部が宮内省に献納されて「篠山中菊」と命名され、新宿御苑で異彩を放ったこともあるという。戦時中、多くの品種が絶滅したが、今も残る数種のお苗菊を丹波篠山の愛育家らが100年以上にわたって受け継いでいる。
11日まで同市北新町の大手前南駐車場で「市菊花展」が開かれており、お苗菊も会場の一角に彩を添えている。観光で同市を訪れたという神戸市の女性(50)は、「花が巻き上がっている様子がとても美しい。門外不出というところも雅ですね」と笑顔で話していた。