兵庫県丹波篠山市のあちこちで、畑に不思議な光景が広がっている。一見しただけでは何かわからない物体がきれいに整列。下部に向かって、たくさんの突起が伸びたようなこの奇妙な形状、まさか、アメリカの小説家・ラヴクラフトの作品に登場する宇宙生物「クトゥルフ」の軍団か―?
そんなわけもなく、正体は同市の特産で、おせち料理の定番「黒大豆」を熟成・乾燥させている光景。育った豆を株ごと刈り取り、根の部分を上にして立たせることで寒風にさらしている。
逆さにするのは、熟成が遅い根に近い部分を陽光に当てるため。こうすることでまんべんなく熟成させることができるという。乾燥するのは、豆の水分量の調整や、さやから実が離れやすくすることなどを目的にしている。
農家によると、熟成・乾燥の方法には逆さに立てるほか、刈り取った株を稲木などにかけるよう方法、育ったまま放置する方法などがあるそう。それぞれの農家で、それぞれに合った方法が採用されている。
手間暇かけて出来上がる伝統の逸品は、甘くてコクがあり、大粒。もういくつ寝ると、みなさんもおせち料理の中で出会うかも。