兵庫県丹波市柏原町の西楽寺の滝川秀行住職(71)が、表現豊かに撮ったアマガエルの写真に警句を添えた写真詞集「吾輩は蛙 ただ今参上」を作成し、風詠社から発行した。無表情に見えるカエルだが、「撮影しているうちに無表情の顔の中にも、しぐさにも感情が感じられるようになった」といい、シャープで深みのある画像を通してアマガエルの持つ妙味を引き出している。「人生は『自信の有無』ではなく『決意の強さ』で決まるのだ」など、滝川住職の人生観を反映した警句が一枚一枚の写真に添えられ、読みごたえもある。
中学校時代に、日本の戦前の写真界をリードした名取洋之助の本を読んだのがきっかけで写真に興味を持ち、高校時代は、写真の専門雑誌に応募していたという。
同書は、3万枚をくだらないアマガエルの写真データから約130枚をピックアップしてまとめた。撮影場所はいずれも同市内の寺院。ハスを栽培した直径80センチほどの鉢が数十鉢あり、そのハスに来るアマガエルを狙った。
ハスの茎につかまり、前脚が合掌しているかのように見える写真は、浄土宗兵庫教区作製の啓発ポスターに採用された。前脚の一本を“バイバイ”しているかのように振っている愛嬌のあるポーズ、ハスの茎に乗り、跳躍しようか思案しているように見える姿態、ハスの葉の縁につかまり落下しそうな瞬間、垂れ下がった1本のクモの糸に前脚がからんだアマガエルなど、千変万化を逃さずにとらえた。
警句は、「人生は内なる自己に出会う旅である。ゆえにも、『自らの内なる世界』程度にしか人生は展開せず、逆に『自らの内なる世界』程度には必ず展開するのが人生である」など、含蓄に富む。
「数年間、アマガエルを撮っているうちに、いくらカメラを向けても逃げなくなり、こちらの願う通りの場所に移動してくれるようになりました」とほほえんだ。
1冊1800円(税別)。