新型コロナウイルスの影響で、人が集まることが難しい状況にある中、インターネット上でビデオ会議ができるソフト「Zoom(ズーム)」を活用する動きが広がり始めている。兵庫県丹波市でも、情報通信技術(ICT)で学びを助けようと、休校中の子どもたちに「ズーム」を使って初めてオンラインレッスンを行った習い事塾と、教師の研究サークルの取り組みを取材した。
「ズーム」は、インターネット上でビデオ会議を行うために開発されたツール。顔を見ながら双方向で会話できるだけでなく、画面の共有や書き込みなど、さまざまな機能がある。アプリをダウンロードして使う。ビジネス向けの有料版と、個人向けの無料版がある。
英語塾で活用「受験前に空白期間作りたくない」
同市などで3教室をもつ「バディ・イングリッシュスクール」(高杉美咲代表)。市の休校要請に沿って、3月2―13日まで全ての教室を休講にしたが、受験を控えた中学3年生たちにリスニングの空白期間をつくりたくなかったことや、自宅で過ごす時間の「息抜き」にもなればと、一部の生徒に初めて「ズーム」でのオンラインレッスンを試すことにした。
11日は、高杉代表(42)と、同教室の外国人講師、中学3年生の女子2人の4人で授業。指定しておいた時間にタブレットやスマートフォンで「ズーム」を立ち上げて会話した。
このソフトは、ビデオ通話ができるだけでなく、「会議」に必要なさまざまな機能がついている。課題プリントを画面で共有しながらその場で添削したり、ペンツールで書き込んだ単語を表示したりしながら、楽しくレッスンが進んだという。
ピアノ教室「いつもと違うけど集中できた」
また、ピアノ教室「ムジカラ音楽教室」を開いている南麻紀さん(43、同市)は、今後、感染症や台風などで休講にせざるを得ない場合のことを考え、休校期間を活用してオンラインレッスンの体験を行った。
11日には、同県丹波篠山市の小学3年生の女児が体験。双方ともスマートフォンを使い、女児の演奏を聞いて南さんがアドバイスした。
「音を追求する分野なので、対面にはかなわないが、レッスンを休んでしまうよりオンラインでできた方がいい。これから使い方を工夫していきたい」と南さん。女児は「いつもとちょっと違ったけど、先生の話を集中して聞けた気がする」と話していた。
教諭有志も活用研究
また、情報教育を研究する教員有志のサークル「氷上情報教育研究会」はこのほど開いた月例会で、「ズーム」の活用を研究。同ソフトを使って、体育館で開かれる卒業式に出席できない在校生に、「教室のモニターで式の様子を見せてやれないか」などと活用策を話し合った。
休校中の児童が自宅で学習できるように、「ズーム」で教師が授業をする様子を見られるようにできないかといったアイデアも出し合った。
議論の中で、技術的には可能だが、それぞれの家庭にネット環境と端末が必要で、現段階では各家庭のネット環境の調査や、その調査をすることの是非の議論もできておらず、クリアすべき課題を共有した。