任期満了に伴う兵庫県丹波篠山市議会議員選挙(今月19日告示、26日投開票)が近づいてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大、さらには緊急事態宣言の対象区域に入ったことが選挙戦にも影を落としている。市選挙管理委員会は、投票所や開票所において、消毒液の設置や、投票用紙に記入する鉛筆の持参を認めるなどの感染予防を徹底。「法律に基づいた選挙は、イベントと違って延期できない。対策を取っているので、一人でも多くの方に来ていただきたい」と話す。一方、立候補予定者も人が集まる演説会を中止するなど対応に追われており、当選シーンでお馴染みの「バンザーイ」についても、「受かっても、人を集めず、”無音”でするしかない」と漏らす人もいる。
市選管は、投票所では立会人や従事者、選挙管理者のマスク着用はもちろん、定期的に換気を行うほか、入り口に消毒液を置いたり、一度に大勢の人が入場しないように気を配る。
また、投票用紙に記入する鉛筆(シャープペンシル可、ボールペンは不可)の持ち込みも認める。記載台の間隔もできるだけ開ける。
26日夜から丹波篠山総合スポーツセンターの体育館で行う開票作業には、市職員など約50人が従事。投票箱を開ける開披台を通常の倍の4カ所に置き、なるべく人を分散させ、短時間で作業を終わらせるよう努める。
市選管によると、7日に緊急事態宣言が出されたが、法改正がない限り、現行制度では選挙は延期できないという。立候補予定者には、感染拡大防止への対策を呼び掛けた。
一方の立候補予定者からは、「どうすればいいか」と悩む声が聞こえる。通常の選挙活動は、(1)密閉空間(2)密集場所(3)密接場面―のいわゆる「避けなければならない”3密”」に当てはまることが多いからだ。
ほとんどの予定者が告示日の出陣式や個人演説会の中止を決定。選挙カーや朝立ちでのあいさつ、ビラの配布などに注力する方針を固め、街頭での握手も避けるなど、かつてない静かな選挙戦になることが濃厚になっている。
ある新人は告示日の19日から25日まで、毎日2カ所での演説会を予定していたが、全て取りやめた。「個人演説会は自分の考えを聞いてもらう機会。新人にとってはとても痛い」と話す一方、「万が一、感染が起きたら大変なことになる。有権者のみなさんや選挙事務などでお世話になる人のことが一番心配。あとは、どこまで投票率が下がるか」と漏らす。
別の現職は、「地域の人から『選挙あるんか?』と聞かれるような状況」と言い、出陣式、演説会に加え、当選しても「バンザイ」はしない予定。「やったとしても屋外などの広いところで、マスクをして無言で手を上げるくらい。選挙活動は自粛とは相反すること。長年、選挙をしてきたけれど、こんなことは初めて」と困惑する。
別の現職は1月に新型コロナウイルスの感染拡大が見え始めたころから「こうなることは覚悟していた。粛々とやるだけ」と言い、演説会などができない代わりにインターネットなどを活用した方策を練っている。
一方、「今回の対応で、今後の選挙戦が変わるきっかけになる」と話す現職も。演説会、出陣式を取りやめたほか、選挙カーに乗車する「ウグイス嬢」もなし。事前に録音した音源を流し、大半は自らマイクを握る。前回選挙では30人ほどのスタッフを必要としたが、今回は選挙カーの運転手数人と身内のみ。「いつもたくさんの人に手伝ってもらっていたけれど、今回くらい少ない方が気を遣うこともないので楽」と話している。
今年3月1日時点の選挙人名簿登録者数は、3万4714人。前回2016年の市議選の投票率は61・94%だった。
9日時点で、同市内で感染者は確認されていない。