小中学校の休校が長期化し、再開が決まらない中、兵庫県丹波市内の小学校で、インターネットを使った情報通信で、児童とコミュニケーションをはかろうという試みが行われている。一部で家庭学習への活用可否の検討も視野に入っているが、ネット環境や機器の整備・保有状況が各家庭で異なっているほか、教師も保護者も児童も突然の事態に準備ができていない。「子の学びを止めない、かつ、教育の機会均等を保障する」。2つの命題を抱え、教育現場は模索を続けている。
集まらずとも遠隔で通信できるネット。様々なソフトがある中で、何が使えるかを試している。
テレビ電話のように顔を見ながら双方向でやり取りができる会議ソフト「Zoom」は児童の点呼や健康観察に、動画共有サイト「You Tube」は、教師が投稿した体操の動画などを視聴させ、児童に実践を促せないかと探っている。ソーシャルネットワークサービスの「LINE」は、保護者への連絡やアンケート回収などへの使途が想定されている。
市内のある小学校が4月22―24日の午前8―9時に、163児童(121家庭)と学校を結ぶ「Zoom会議」の接続テストを行った。ネット環境と機器、カメラとマイク機能が必要。スマートフォン1台で参加できる。3日間のうち1度でも「会議」に参加できた児童は66%、世帯にして60%だった。1度も接続がなかった家庭には電話で連絡し、接続できなかった背景を尋ねる。時間帯の設定の問題か、機器の問題かなどを明らかにし、課題の把握と解消に役立てる。
事前に保護者にはメールでテストの実施と、「Zoom」の使用手順を知らせた。事前の調査で、90%以上の世帯が、「ネット環境(Wi―Fi、もしくは通信料定額制)は整っている」と回答していた。
初日は児童も教師も「つながれた」だけでうれしかったという。3日目には教師の点呼と健康観察に加え、○×クイズを出題。「Zoom」の挙手機能を使うなど、日に日に教師も児童も習熟していった。3日目には在宅勤務の担任教師も会議に参加し、自宅から点呼をし、画面に手を振った。
同校は、できれば朝のうちに児童とつながり、1日の生活リズムをつくるのに「Zoom」が使えないかと考えている。情報担当の教諭は「新年度が始まって、児童と4、5回しか会えていない。学習よりも、子どもがどうしているのか、顔が見たいという切実な気持ちがあった。思った以上に参加してもらえてほっとしているが、顔が見えなかった子に電話するなどし、フォローしたい」と話していた。