新型コロナウイルスの影響で臨時休校が続く中、端末と環境がないために「つながれず」、インターネットを使ったオンライン学習がしづらい生徒を支援しようと、今年23歳になる兵庫県丹波市出身者のグループがこのほど、地元の柏原中学校にICT(情報通信技術)の端末と周辺機器を寄付した。若者たちは、「自分たちが育ったまちへの恩返し。役立ててもらえれば」と話している。
「丹波市オンラインプロジェクト」(藪下文也代表、12人)。同市内外の友人、知人にSNSを使って趣旨を訴え、63人から寄付金約17万円を集めた。
今春から大学院で公共政策を学ぶ藪下代表が大型連休前に、父で同校教頭の正文さんと休校中の学校の課題を話し合う中で、オンライン学習を進めにくい事情の一つに、端末と環境整備の問題があることを知った。藪下代表は、行政の手続きは予算化し、機器購入に至るまで時間がかかることを大学で学んで知っており、「教育を止めないため、また環境の有無で、都市部の子どもたちと地方の子で教育格差が生まれてはいけない」と、寄付を募ることにした。
藪下代表は同市の青垣中学校の元生徒会長。中学校時代の生徒会の仲間に声をかけ、そこから市内の中学校の元生徒会役員や部活の主将、副主将らに声をかけ、輪を広げた。それぞれ別の中学、高校に通い、直接面識がなかったメンバーが5月初旬からSNSでつながり、ネット上で会議を開き、寄付の呼びかけもSNSを利用した。現金を集められないためクレジットカードと紐づけされたスマホ決済アプリで決済した。
3月に大学を卒業した古川瑞希さんは、丹波市の友人のほか、大学で出来た友人にも寄付を呼び掛けた。「都市でない地方であることを具体的に伝え、なぜ寄付が必要なのかを訴えた」
メンバーや寄付者には、初任給の一部を寄付に当てた人もいる。同県芦屋市の久下浩大さんは、「親への贈り物もちゃんとした。この企画がなければ、いい服を買っていたかな」と笑った。都内在住の会社員、橘天馬さんは「地元愛。良くしてもらったので、社会人となった今、自分たちができることを」と思いを語った。
同団体は他校にも同様の寄贈をと考えていたが、緊急事態宣言の解除と、学校再開が見えて来たことから、活動のあり方を模索している。
グループの広報担当で、高校非常勤講師の小西天祐さんは、「刻々と状況が変わり、活動の方向性に悩みはあるが、丹波市を離れて暮らす私たちが、地元で暮らしている同級生らと力を合わせ、引き続き役に立てることを考え、形にしていきたい」と話している。
メンバーらは18日、柏原中学校で大槻芳裕校長と面談し、タブレットやウェブカメラを手渡した。
同校にあるウェブカメラは1台で、会議ソフト「Zoom」で生徒と対面する際には、教師が列をなしてノートパソコンに並ぶなど、機材不足で円滑なネット接続テストができずにいた。
大槻校長は「若い人たちに動いていただいてありがたい。ちょうど接続テスト中でカメラが足りていなかったのでさっそく使わせてもらう。柏原中に頂いたが、市内全校で使う方法を考えたい」と謝辞を述べた。
藪下代表は「使えば使うほど、心理的ハードルが下がる。コロナの第2波や、台風など、役立ててもらえる場面があるのでは」と話していた。