「カメポスト」に「カメダイヤル」 外来種駆除に市が設置 「根絶へ市民の協力を」

2020.06.04
地域自然

堀のそばに設置した「カメ回収ポスト」=2020年5月29日午前11時47分、兵庫県丹波篠山市北新町で

兵庫県丹波篠山市は市内で捕獲された外来種のミシシッピアカミミガメを引き取る事業をスタートし、同市北新町の国史跡・篠山城跡内に「カメ回収ポスト」を設置したほか、市職員が引き取りに出向くための「カメダイヤル」を開設した。アカミミガメは同城跡南堀にあったハスの群落を消滅させた原因の一つとされ、市が数年前から駆除に乗り出しており、全国でも例のない「根絶」に近づいている。市は、「産卵期で陸に上がってくる時期。アカミミガメには申し訳ないが、在来種を守るため、市民のみなさんにも協力してもらいたい」としている。

カメポスト

5―7月ごろにかけて水辺から陸に上がって産卵することから、残るカメの駆除に市民の協力を仰ぐ。

 水を張り、網とふたを付けた「ポスト」は、同城跡三の丸西駐車場入り口付近に設置。7月末まで試験的に設置し、市民が捕獲した際、自由に入れてもらう。平日は毎日、職員がポストをチェックする。
 市民が捕獲し、「カメダイヤル」(市農都環境課直通)に電話を入れた場合は、カメの特徴などを確認し、市役所に持ち込んでもらうか、職員が週1回程度、引き取りに出向く。
 引き取ったカメは環境省の手引きに従い、適切に処分する。同市は、神戸大学と連携してカメを堆肥に活用する方法も採用している。

ミシシッピアカミミガメ

ハスの復活プロジェクトを展開している市は、2014年から駆除を始め、今年5月までに1311匹を駆除。対策が功を奏したのか、昨年、15年ぶりにハスが開花し、現在、1割程度が復活している。

 その後、わな1基当たりの捕獲量の推移から、堀の中には残り100匹程度がいると推定しており、狭いエリアとはいえ、「根絶」に近づいているのは全国でも例がないという。
 市は、「低密度で管理できているが、手を緩めるとすぐに増える。ぜひ、市民のみなさんにも関心を持ってほしい」と呼びかけ、「飼育している人は、最期まで大切に飼って」と話している。
 ミシシッピアカミミガメは顔の赤い模様が特徴。幼体は鮮やかな緑色をしていることから、「ミドリガメ」とも呼ばれる。1950年代に北米から持ち込まれ、1966年には菓子の景品に利用されるなど、ペットとして大量に流通。90年代半ばには年間100万個体が輸入されていた。
 飼育しきれなくなって捨てられたり、逃げ出したりして野生化と定着が進行。北海道と南西諸島などを除く全国の野外に800万個体が生息していると推定され、地域によってはアカミミガメが「最も普通に見られるカメ」になっている。
 雑食性で、篠山城跡のハスをはじめ、在来の水生植物を食べつくしてしまったり、鳴門市では食害によって特産のレンコン(ハス)の収穫量が減少するなど、農業面への被害も出ている。
 また、繁殖力が非常に強いことから他生物にも影響を与え、ニホンイシガメなど在来のカメは絶滅の危機にひんしている。
 このため、環境省・農水省の「生態系被害防止外来種リスト」で、「緊急対策外来種」に指定されている。

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