猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症―。「第2波」が懸念されている中、感染拡大からこれまで、兵庫県丹波篠山市、丹波市の地域社会を維持するために奔走した人々に当時を振り返ってもらい、今後の備えを聞いた。今回は丹波篠山市福住の特別養護老人ホーム「山ゆりホーム」の介護職員、稲葉夏輝さん(32)。
―第1波を振り返って
新型コロナウイルスが出始めた2月ごろは、もともとインフルエンザが流行する季節で、手洗い、うがい、マスクの着用、利用者同士で集まりすぎないことなどには気を遣っていた。コロナ禍でも、平時の延長線上として感染予防を徹底していた。面会制限をかけていたので、利用者が「家族に会いたい」と強く要望されることがあり、そのフォローに関しては大変だった。
―施設としての対策は
本来、外出行事が多い施設だが、花見など、外出が伴う行事は感染リスクを考慮し、全て中止にした。職員には不要不急の外出を控えるよう呼びかけた。ウイルスを持ち込むとしたら自分たち。パチンコやライブなどが好きな若い職員も多いが、我慢してもらった。
―利用者の感染対策は
食前には、アルコール消毒液を使い、手指の消毒をする。手洗いや部屋の加湿なども行った。利用者もコロナの感染リスクについては承知されているようで、嫌がる方はいなかった。
―業務上、特に気をもんだ点は
どうしても「3密」になることが避けられない仕事。各自で手洗いやうがい、換気、マスク着用などに気を遣った。まだ暖房をつけていた時期はどうしても暑くなり、ついマスクを取りたくなるときもあったが、スタッフ同士で注意し合った。第一波では市内で感染者は出なかったが、感染状況の情報収集についても気を配った。
―介護施設は利用者の「命」を預かる仕事だ
利用者の「命」を預かる一方で、「人生を守る」仕事でもある。「人生を楽しんでもらおう」というのが施設の方針。過度に制限をかけすぎると、利用者の人生がつまらなくなってしまう。外出行事については2月の時点で中止になると思っていたので、「屋内でできる、楽しいことをたくさんしよう」と、職員同士で企画を話し合った。
―例えば
職員が腹話術などを披露するかくし芸大会や、有名店を招いてラーメンを振る舞うなどの催しを行った。相談員として、利用者から「家族に会いたい」「家に帰りたい」という相談を多く受けたので、「Zoom」(遠隔会議システム)を使った「オンライン面会」も始めた。利用者の家族からは「顔を見られて安心した」と安堵の声を聞いた。「どうやったら利用者の皆さんに喜んでもらえるだろう」と、職員内からどんどんアイデアが出てきて、こちら(職員)が成長できるチャンスにもなっている。
―感染リスクを感じながらの業務だったか
どこにも外出していないので、その点に関してはなかった。
―都市部では再び感染が広がっている
感染予防に努めながら仕事をしていくしかない。何より、自分が感染しないことが一番。