存在薄れた「子午線のまち」PR 住民らモニュメントを美化 標識調査の男性と地域が呼応

2020.07.04
ニュース丹波市地域地域

周囲に花が植えられ、きれいになった日時計と、作業に協力した住民ら。「子午線の通る町」のプラカードを持つ右の男性が吉野さん=2020年6月27日午前11時6分、兵庫県丹波市山南町梶で

兵庫県丹波市山南町のフランスベッド兵庫工場の門の前にある日時計の周囲に花を植える作業が、このほど行われた。子午線標識の調査をライフワークとする神戸市の男性と、地元住民が呼応して5月から周辺の美化活動に乗り出し、仕上げの花植えを行った。日本標準時子午線通過地点を記す標識と、日時計は1972年5月、山南町合併15周年記念につくられたが、時代とともに存在感が薄れ、最近では周囲に雑草が繁茂する状態だった。住民らは「子午線のまちとして、市をPRする材料の一つになれば」と意気込んでいる。

住民らが美化活動をする前の日時計

男性や地元の住民ら約30人が参加。神戸市の花時計をイメージし、日時計の周囲にサルビア、マリーゴールド、ベコニアなどを100本ほど植えた。今後も季節に応じた花を植え替えるという。

きっかけをつくったのは、神戸大学理学博士で、2007年から個人的に子午線標識を調査している吉野健一さん(56)。当初から現地を確認し、毎年のように訪れているが、雑草が生い茂る状況に「このままだと文化財としての子午線標識が廃れてしまう」と危機感を抱いた。自身で草刈りをしようと土地の所有者を市に確認したところ、フランスベッドの所有であることが分かった。

すると偶然にも同じタイミングで、地元の大嶋恵子さん(65)も日時計周辺の美化に向けて適当な市の助成がないか調べたりしていたところで、市を通じてつながりが生まれ、一緒に美化作業に取り組むことにした。

土地を所有するフランスベッドも周辺の草刈りを行い、協力してくれた。また大嶋さんは、地元の知人らの協力を得ながら日時計の周囲の支柱や鎖にペンキを塗ったり、細かく砕いた瓦を敷き詰め、草抑えを兼ねて見栄えよくしたりした。

吉野さんは、「見違えるようになり、すばらしい。涙が出るほどうれしい」と喜び、「まちをPRするものの一つとして子午線標識や日時計を加えてほしい」と話している。

来年5月が、日本標準時が制定(1886年)されて135周年にあたる。大嶋さんは、「来年5月にここで何かイベントをしたいと考えている。地元の子どもたちが緯度や経度を学ぶ際にも活用してほしい」と話している。

吉野さんによると、子午線は丹波市を含め12市を通っている。県内9市のうち、明石市が最も有名だが、通過距離は最も短く1・8キロ。最も長いのは丹波市で24・1キロ。「日本へそ公園」で有名な近隣の西脇市でも12・3キロ。丹波市内には子午線標識が8カ所に立っている。

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