夏も登校の児童 一肌脱いだ観光バス会社 無償送迎実施へ コロナで休み短縮「熱中症から子ら守れ」

2020.07.18
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22日からの送迎開始を控え、試走に向かう関係者=2020年7月14日午前6時47分、兵庫県丹波市氷上町絹山で

新型コロナウイルスの影響で夏休みが短縮され、猛暑の中を通学することになる小学生を熱中症から守ろうと、兵庫県丹波市内の観光バス会社3社が、7月22日―8月25日(夏休み期間の8月8日―23日を除く)までの13日間、登下校時に無償で送迎バスを走らせる。新型コロナの影響で大打撃を受けている観光バス業界。「どうせバスは動かない。このままでは“置き傷み”が進むだけなので、地域のお役に立ててもらえたら」と話している。

3社は大伸観光、丸茂観光バス、大垣観光バス。自社の観光バスをスクールバスにして、同市立北小学校と和田小学校の遠距離通学児童を対象に送迎する。

3―6月にかけて臨時休校となった分、授業時数の確保のため夏休みが短縮。児童は一年の中で最も暑い期間の登下校を余儀なくされる。

北小では、普段から1時間ほどかけて歩いて登校する児童が多く、同校の黒田睦美校長は熱中症対策に気をもんでいた。児童の送迎に民間バスを借りた場合の相場を探ろうと、先月、児童宛てにマスクの寄贈を受けた大伸観光の北野有作専務(45)に問い合わせた。

北野専務は、マスク寄贈後、下校中の児童たちが同社の前を通りかかった際に、「マスクありがとう」と大きな声でお礼を言ってくれたことに「心を打たれた」と言い、これまでも児童たちが暑さで顔を真っ赤にしながら下校している様子が心配だったという。

「送迎バスの運行を有償でやろうと思ったら入札制になる。手続きを踏んでいると時間が掛かり過ぎ、実施がどんどん遅れる」と、ボランティア活動としてバスを運行させることにした。

旧知の仲の同業2社に思いを伝え、協力を求めたところ、二つ返事で快諾。「背中を押してくれた」

丸茂観光バスの岡本優一営業部長(46)は、「熱中症の危険性がある時期。子どもたちの足になれたら」と話し、大垣観光バスの大垣太計雄社長(51)は、「子どもたちのためというのであれば協力させてもらう」と一肌脱いだ。

北野専務らから無償運行の提案を受けた市教育委員会は、学校から地域の公民館までが3キロ以上離れている地区の児童を対象とし、該当する小学校に打診したところ、北小と和田小から要望があった。

北小は大伸観光と丸茂観光バスが対応し、和田小は大垣観光バスが担当する。3社で45人乗りバス2台、27人乗りバス1台の計3台を運行させる。

学校側と協議を重ね、送迎ルートや時間を設定。万が一のことがあってはならないと、14日には北小の送迎ルートの試走を行った。その後、児童たちを交えたバスの昇降練習や保護者説明会を開いた。和田小でも15日に試走と昇降練習を実施した。

3社は、「初めての事態に前例のない取り組みをする。バスに乗れる子、乗れない子が出てきて不公平だと思われる人もいるかもしれないが、今後も起こりうる有事に備え、この取り組みが丹波市の対策モデルの一つになるよう、温かく見守ってほしい」と話している。

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