「なんじゃこりゃ」 神出鬼没の希少植物現る ひょろりとタシロラン

2020.08.07
地域

山すそで見つかった、丹波地域初確認のタシロラン=2020年7月20日午前10時22分、兵庫県丹波篠山市内で(男性提供)

ラン科の希少植物「タシロラン」が、兵庫県丹波篠山市で見つかった。県内では3地域で確認されているが、同市を含む丹波地域では初。山すその雑草を草刈機で刈り払っている最中に見つけた男性(71)は、「昨年も同じ時期に同じ場所で草刈りをしたが気付かなかった」と話し、「この場所はこのままそっとしておく。今はもう枯れて見られないが、来年もまた生えてくれたら」と期待している。

男性は7月20日、集落の山すそで草刈りをしていた際に、草丈20数センチの、白っぽくてひょろりとした植物に気がつき、慌てて草刈機を止めた。「なんじゃこりゃ」

山野草が大好きで、花との出合いを求め、約40年前から全国各地の山々を歩いてきたという男性でも見たことのない“珍品”が10本近く株立ちしていた。

花の色からすぐに光合成を行わない腐生植物と分かり、図鑑やインターネットで正体を探って当たりを付け、地域の自然愛好家を通じて植物学者からも「タシロランです」とお墨付きをもらった。

県が発行するレッドデータブックの2020年版での新規掲載種で、「県内において絶滅の危険が増大しており、生育環境、自生地などの保全が極力必要な種」とするBランクに指定。環境省のカテゴリでは準絶滅危惧(NT)となっている。県内ではこれまでに神戸市、多可町、淡路市で見つかっている。

同ブックによると、本州(関東以西)、四国、九州、琉球諸島で分布。暖温帯から熱帯の常緑広葉樹林に生える。高さ20―50センチで白黄色。5―7月、白色花をやや多数、総状につける。

人と自然の博物館(同県三田市)の藤井俊夫主任研究員(55)は、「葉緑素を持たず、菌類と共生して生育する植物。薄暗い森で、腐葉土が分厚く積もった鎮守の森のような場所を好む」とし、「ラン植物は神出鬼没。来年も同じ場所に生えるかどうかは分からない」と話している。

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