研究者“引退”し実践へ
丹波篠山市と連携する神戸大学の丹波篠山フィールドステーションの管理者を今年4月から務めている。主な業務は、地域おこし協力隊員の活動をサポートしたり、学生の体験講座の受け入れ準備など様々。市民から直接、村おこしに関する相談を受けることもある。中でも「協力隊員が持つそれぞれの特技は、市全体にとっても戦力」と言い、「広くみんなに知ってもらい、交流が生まれるような機会」を計画中だ。「地域課題を学んでいる高校生が学校帰りにふらりと立ち寄れるような場所にしたい」と話す。
3月までの8年間、京都大学の「森里海連環学教育研究ユニット」に在籍。三陸地方のカキ猟師が森に木を植えるような活動を学問として捉え、森、里、海に関するそれぞれの専門的な研究をつなぎ、持続可能な社会に向けて環境に配慮した行動を社会で実践していくことを目指した。
苦心したのが、研究内容をいかに社会や市民に分かりやすく伝えるか。「価値観の違う研究者の間に立ち、コミュニケーションを取りながら実践に落とし込んでいく経験の中から、課題に対して何からどう手を付けて、どんなふうに取り組めばよいかという引き出しが増えた」と振り返る。
さらには「『研究者』『実践者』という枠組みがばからしくなってきた。ある意味、私は研究者を“引退”し、これからの10年は、これまでの研究成果の実践バージョンにしたい」と目を輝かせる。「『こんな研究、何の役に立つんですか』と学生に問われたら、こんなふうに社会の役に立つんだよと、しっかり伝えたいですから」。神戸大学大学院農学研究科特命准教授。49歳。